突然「障害」と言われて納得できるわけがない

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発達障害」という言葉が嫌い


嫌いだと言っても行政に出す書類を出すために使うこともあるし、実際~の専門という時に一々いやそう言うのは嫌いなので…と伝えるのも面倒なので使うことはあるんですが、「障害」という言葉はどうにも使いづらいのです。


というのも、例えば、学校や職場などから「あんたは発達障害の気があるから診てもらってきなさい」という要請を受けて受診された方々や、親に連れてこられて本人的には半強制で来院した子供たち。どちらかといえば自分に問題があるとは感じていなかった人が、問診を経て、検査をしたからと言っていきなり「発達障害ですよ」と言われて納得できるもんかなと思うわけです。こちらとしても、自分から「発達障害だと思いまして」と来られた人ならともかく、そうでないのに「障害」呼ばわりされては理不尽感ハンパないだろうと。


実際、障害の定義が「ものごとの達成や進行のさまたげとなること、また、さまたげとなるもの」(Wikiより)であれば、発達特性を持つ場合に、それが必ずしも障害ではないわけで…そのことは以前書いた中で主張してきたつもり。

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科学者、医者、職人さん、にはASDADHDも、小さい頃LDだったぞという人も多いのですが、今活躍してる人で特性があるからといって障害という呼称を当てるのは明らかにおかしいでしょう、と。



障害ならそれを取り除く、すなわち治療するのかという議論にもなると思うわけですが、特性そのものを「治療する」というのはそもそもおこがましいと言うか、そこは変わらんでしょうとも考えるわけで。


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かといって、「障害」を「障碍」とか「障がい」と言い換えるのも何だかもやっとした感情が残ります。少なくてもワタシ的には。行政は当てる漢字を変えればいいでしょう、なのかもですけど。


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「障害」の定義Wikipediaさんは、「医学的には、生理的な機能障害のimpairmentと、その結果ものごとを遂行するための能力障害disabilityが日本語では区別されておらず、また精神障害では、変調を意味するdisorderに障害の語があてられる。」と書いてますが、正にそのとおりで、英語から~Disorderと書いてあるものが、日本では上手く当てはめる単語がないということなんでしょう。


障害という言葉を忌避してか、最新のアメリカ精神医学会診断基準DSM-5の訳では、「~症」という言葉を使い始めました。例えば、パニック障害→パニック症、注意欠陥多動性障害→注意欠如・多動症という感じに。


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妥協点としてはまあいいとは思うんですよ。だから「発達障害」も「発達症」と言ってもいいのかもしれないし、実際使っている人はいました。



とりあえず「発達特性を持っている」と表現している


dneuroの臨床ではだから相談をしてもらうのも、「発達特性」という言葉を使ってます。この言葉は誰かから聞いたり読んで使い始めたわけではないけれども、「発達上の特性を持っている」という言い方は少なくても奇妙ではないし、それなら「発達特性」の特徴を見る、ということで良いのでは、と考える次第。とはいえ、英語で発達特性=Developmental Characteristics、を調べると、例えばある年齢範囲の純粋な発達上の特徴、という形で使われているので、必ずしもベスト、というわけではないかもしれない。とはいえ、個人的にはではどう呼ぶのが良いのかはわからなかったりします。特に英語で聞いたときのニュアンスとしてどうなんだろうかとか…。今度ネイティブに聞いてみよう。



ともあれDSM-5の訳、良いと思うんですよね。大体ASDなんかはもうスペクトラムなわけで、定型(この言い方もなんとかならならんかですが)の方との間は断絶があるのではなく、連続した性質の中で、強い特徴が目立つという概念なのだから。ASDの説明項目も、「周囲からの社会的要求が能力の限界を超えるまでは完全には明らかとはならないかもしれない」という記述があって、ハンデになりそうな性質を能力でカバーしていることはよくあるわけです。それで上手く行っているなら、やはりわざわざ「障害」診断する必要は無いだろうと思うんですよね。ある意味問題が出てきたら診断し、問題が消失したら診断を引っ込めるのも可というか。


私はそう感じているんですが、ともあれ自分の特徴を告げられた人が、それを受け入れやすい呼称、そして偏見を助長しない呼称、というのは大事ですよね。それはごまかしとか、ラベルを貼り替えるだけという非難は当たらないと思うんですよ。元々の言葉がおかしいんだから。


理想としては、特性を持っていることに対して、卑屈になったり、蔑視するような感情を持たずに、自由に「俺(私)の特性からするとそれは苦手なんだよねえ〜」とか、「お前の特性だと一体どう感じてんの?どうすれば楽なのよ?」とか気軽に口に出せる状況が良いなと思うんですが。



ちなみに、「統合失調症精神分裂病」も、変わって本当に良かったと思います。そもそも名が病態を現していなかったし。一方で「痴呆→認知症」は痴呆のままよりはいいけど、「認知」という言葉に本来とは別な意味が加わってしまったのは余り良い呼称じゃないなあとは思ったりします。