片頭痛についての当ブログ的まとめ

今年もはや3月末になって、最初の投稿が残念ながらこんなに遅くなってしまいました。
1つには代表を勤めている会社のブログに注力していることもありますので...と言い訳ですけどね。


さて、会社(ライデック)のブログでこの4月から発売予定の片頭痛の注射予防薬、ガルカネズマブについてまとめてみました。
日本イーライリリー社と第一三共が共同で販売するようです。商品名はエムガルティ。


www.tsudanuma-ridc.com


以前も実は片頭痛予防の注射薬についてまとめてみてます。

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もう3年前です。

当時私が把握していたのはそこで紹介したエレヌマブとフレマネズマブだったんですが、まだかな〜と思っていたらガルカネズマブのほうが先になったんですね。

薬理学的機序としてはフレマネズマブと同じです。CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)という血管拡張物質の作用を阻害します。
ガルカネズマブとフレマネズマブはCGRPに直接結合してその作用を阻害、エレヌマブはCGRP受容体に結合してCGRPの結合を阻害します。
〜マブという名前が示すとおり抗体医薬です。


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片頭痛予防薬は実は既に何種類もあり、効果もある人にはある、という感じですが当然効かない人もいます。私もその1人。
なので、今回の〜マブ薬のように確実な効果が期待できそうな薬には心底期待したいのです。


どのくらい期待できるのかは、アウトカムである月当たりの片頭痛発作回数減少になります。幾つもある臨床試験の結果は似たりよったりで、発作をゼロにはできないけど、4-6割程度は軽減できそう。
そう書くと大したことは無さそうですが、例えば月に6回が3回になれば、年間では36回も減ったことになりますよね。これはすごく大きい。


とはいえ、片頭痛は年間を通して均一に起こるのではなく、集中するシーズンと全然無く過ぎるシーズンがある方が大部分ではないかと。
そういう意味では発作の集中する時期がわかっている方は、その時期の1ヶ月前から使って集中する時期を過ぎたらやめる、という使い方をしたいですね。でもそういう使い方では臨床試験はされていないので...とりあえず我が身でそのような方法を試してみようかなと思います。


ところで発作時の治療はトリプタン系の薬が本流です。

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効くときは劇的に効きます。

ただやはり予防的効果は無いですからね。

今回の注射薬のほかに、予防的にも急性期治療的にも期待したいのは私の研究対象でもある経頭蓋直流電気刺激(tDCS)なんですが、こちらは正直まだまだエビデンスが足りなすぎて...自分でtryしてもいいんですがまだまだです。


さていずれにしても片頭痛は辛いので早くに治療導入されてほしいものです。

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以前書いたとおり、片頭痛は半数以上が10歳未満で発症し、20歳未満では平均で9年以上も診断までかかってしまうという驚愕のデータがあります。
私も発症小2で、診断がついたのが医学部4年生、神経内科の講義を聞いて大学病院にかかったときですから、22歳(一浪してるんです)。つまり発症から診断まで18年もかかったのでした。


全国の親御さん、保健室の先生、小児科の先生、是非とも子どもの頭痛の苦しみに早く気づいてあげてください。


もちろん、大人になってからでも遅くはありません。

なにせ経済損失が大きいのです。

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特に女性の方で損失が大きい。
治療導入を早くするとともに、周囲の方は頭痛の苦しさ、発作後の後遺症(倦怠感など数日続きます)を知って配慮をしてあげてください。