片頭痛は早めに診断してもらおう

筆者も抱える片頭痛、悩む人が多い割に、正しく診断されていない。
特に子供。何せ、頭痛というのは熱を出すでもなく、その痛みを検査する手段もない。完全に主観的な体験なので、頭痛に無縁な人にはまるで理解されない。
データが有るわけではないが、腹痛をほとんどの人が経験するわりに、頭痛は経験しない人がいるようだ。私の妻も「頭痛なんて昔は経験したこと1度も無かった」という。


我が息子も頭痛とは無縁のようで、お腹痛いは口にするが、「頭がいた〜い」と苦悶した姿は見たことが無い。それはそれで喜ばしいのだが、片頭痛患者が一体何歳からその痛みを持つのか、とこの前疑問に思ったのでそのご報告。



片頭痛と発症年齢については、日本語の論文は少ないが、子どもの片頭痛に関して詳しいサイトは英語で探すことができる。
例えば、Migraine Research Foundation (片頭痛研究財団)のサイト。



Migaine in children


学齢期における片頭痛の有病率は10%、片頭痛患者の50%は12歳以前に発症し、思春期前の片頭痛発症年齢中央値は、男の子で7歳、女の子で11歳


結構若いのだ。なぜ男の発症は早いんだ?
私は、小学生に上がる頃には頭痛が始まっていたので発症は恐らく6-7歳。
保健室に行っても「熱が無いから大丈夫」と教室に戻るように促され、保健室を出たはいいけど、頭が痛いので教室に戻ることもできず、途中の階段でうずくまっていた経験があったりする(想像するととっても可哀想な子供に思える…)。

日本語論文では、自己申告アンケートの結果がある。飯田栄俊氏の「片頭痛診断の遅延状況」によれば発症年齢が若いほど、診断までの経過年数が長いという。


対象とした44例における片頭痛の発症年齢は平均18±7歳。25歳までに発症している場合が多い。一方、診断を受けたのは平均26±8歳。発症から診断までの経過年数は、発症が20歳を超えていた15例は5.3±3.5年。それに対して、20歳以下で発症した29例は9.5±5.9年。


平成14年の論文だが、要するに若くして発症した片頭痛患者は平均10年放っとかれているわけで、考えさせられる状況だ。私がちゃんと診断されたのも18歳なので、発症から11-12年経過。医学部に入っていなかったらいつになったことやら。


jglobal.jst.go.jp


頭痛の痛み、というと「あぁちょっと頭が重いのでしょう?」という認識でいる人も多い。そんな人の中にも片頭痛持っているんだ〜という人がいて、外来問診時に仰る方もいるが、恐らくその人達は片頭痛の痛みをちゃんとは経験したことはない。「反復性」「生活に障害を来す」「刺激への過敏」が診断のためのキーワードだ。尚、しばしば頭痛の予兆として挙げられる「閃輝暗点」は必須項目ではありません。


そして、ほんまもんの片頭痛発作時に、動くことはほぼ不可能である。
割れんばかりの頭痛に加えて、激しい嘔気(ときに嘔吐も)と光や音に対する過敏によって、暗く静かな部屋に横になっているしか無い状況となる。もちろん、横になったからといって改善するわけではなく、やや過呼吸気味になりながらその辛さに悶え苦しみつつ時間が過ぎ去るのを待つしか無い。


幸いにして「発作性」なので、3〜4時間もすれば何とか動けるようになり、その後の12時間以内には相当程度まで改善する。
これが、1年に1回程度ならまだしも、酷い時には1週間に数度。
なので、その経済損失は莫大なものだ、というのはこの前書いた。

ということで、もしあなたの子供が「頭が痛い」と言ったらとりあえず片頭痛の可能性はしっかり疑おう。特に男の子は小さいうちから。


さて、この苦しい片頭痛、実は終わりがある。大体60歳前後でほぼ消失し、70歳を超える人にはほぼ無いという。実際、私の母、叔父ともに片頭痛を抱えていたが、60歳を過ぎた頃消失したようだ。年を取るにもいいことがあるもんだ。