慢性疼痛、恋愛、眠気とADHD

発達特性研究所の方で論文紹介をしています。

今回は3つです。ADHDと慢性疼痛、恋愛、そして眠気の話題。



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慢性疼痛で学校に通えなくなってしまった6歳女の子です。慢性疼痛は色々検査しても、疼痛の原因がはっきりと同定されず、でも生活にその疼痛が大きく影響しているときにつく病名ですが、なかなか治療に難渋します。
そりゃそうですよね、「痛い」のは本当なのに、原因がない、とか心理的な原因だと言われちゃうので...特に心理的と言われても、言われた当人は「じゃあどうすりゃいいのよ」と思うわけです。

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紹介している論文では、その子にADHD特性があることに気づき、コンサータや療育的対応をしていく過程で慢性疼痛が和らいだ症例を紹介しています。
良い視点を提供しているように感じます。実際同じような子を経験したこともあります。


心理的療法と言っても、直接痛みに対するアプローチでないことが奏効する一例でもあるかなと。



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ADHDの恋愛事情,カナダ編です。なかなかこういう視点からの論文は少ないので、面白く読めました。


よくADHDでは、男女関係が活発で乱れがち、みたいなことが書かれているし、実際特性を考えれば当てはまりそうですが、私の外来では余り感じたことがありません。むしろ奥手で、男女経験がない人も多い...ただ、それは外来に来る人達は、何かしら小さいときに心の傷を負ったり、劣等感を持つ経験をしていて、自信がないから、というのも大きいかもしれません。能力のあるADHDで成功している方の場合には、活発な(ちと羨ましい)恋愛体験を繰り返している可能性はあるかと。


カナダのADHDの若者は、活発なようです。
暴力性とは無関係だったという結果にはほっとします。



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外来をやっていると、ADHDの方が強く日中の眠気を訴えることが多いのです。特に中学生以降くらいから目立つのですが、その実感に合う臨床研究の紹介になっています。


なんで眠気が強いのか、というと、それはちょっとわからない。
体内時計が破綻しているとしても、それはさらに理由の説明が欲しい。


というわけで、メカニズムには踏み込んでいませんが、事実としてADHDは過眠になりやすいのでしょう。


薬を内服し始めると、日中の眠気が無くなって有り難いという方、多いです。


コンサータは、覚醒作用がダイレクトにあるので、それはわかりやすいのですが、ストラテラでもそういう方多いです。副作用に眠気がありますが、眠りを深くし、朝の目覚めがすっきりするのかもしれません。ただこれは単にdneuroの私見であり、エビデンスが欲しいところ。


ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に働くための本

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日常、特に仕事に役立つヒントが欲しいという方については、最近この本を勧めています。
先延ばし、段取り、ケアレスミス、忘れ物...などありがちなことに対して、極めて具体的に対策を載せています。


メモがいい、って言ってもただメモを取ろうだけじゃわかんないよね...。


発達障害の自分の育て方

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当事者本として有名ではないかと。Kindle unlimited使っている人ならサービス範囲内で読めます。

dneuro的にはこの著者さんの主張で、単に向いていることを仕事にしてもつまらない、自分が好きで熱意を持てるものにしないと続けられない、という内容にとても共感しました(正確でなかったらスミマセン)。


著者さんは今データ解析が仕事で、特性だけを考えるなら、不注意が強く、見落としがしょっちゅう起きたりしたら大変なわけですよ。


支援サイドは、どうしても、まず向いていない(だろう)ものを排除しようとしますが、本人の志向があるならば、どう実現できるかをまずは考えたいところですね。もっとも能力的に本当に難しく、諦めざるを得ないということもあるので、そこは冷静な視点が必要でしょうが。