夏休み書評1:本は読むより聴いてみたら?
もうこの3年ほど、dneuroは本を、目を使って読む冊数が大幅に減った。
一方で、Amazonのkindleストアで購入する本は増えた。
読まずにどうしているのかと言えば、最近は専ら聞いている。
使うアプリはiphoneのkindleアプリ。
iphoneの場合、やることは簡単で、基本的にはどの画面でも2本指で上からスワイプしてしまえば画面読み上げが始まる。ipadも同様で、どちらか持っている人にはこれが一番ラクだと思う。
一方androidももちろん出来るがやや面倒。読み上げのメリットと共にこちらを。
本を聞くメリット
1.冊数が大幅に稼げる
目で読んだほうが冊数を稼げると思うかもしれない。でも実際には聞くほうが冊数は増える。
考えて欲しい。
読むというのは非常に能動的な行為だ。特に専門書や興味の無い情報(でも知りたいから本は買うのだけど)を目で追っていくことに高い集中力・前頭葉機能(逃げずに我慢)を要求される。
一方、聞く、のは受動的行為である。
目で追って理解していくのに時間がかかるものでも、音声で読み上げられると、耳を通じてとにかく一方的に頭に入ってくる。それを聞いてさえいればいいのだ。このことの大きなメリットの1つは、これまでに興味が無かったり、読むにはハードルが高い分野の本に手を伸ばせることにあると思う。denuroの場合、歴史や経済分野がこれにあたる。医科学の言葉が幾ら出てきても読むのに障害にはならないのだが(そうだったら困るけど)、歴史なら系図・手紙文(〜候とか)・法律の条文などが出てくるとかなり読むのがしんどい。
でも聞くのは本当に楽。
さらにスピードを早くも遅くも調整できる。まったく知らない内容であったり、入り組んだ内容や、小説の場合には余りに音声速度が早いと理解が追いつかないことがあるが、慣れてくるとかなり早いスピードで読み上げられても理解可能となる。現在dneuroは日本語書籍の場合、おそらく標準の3倍程度が心地よい速度になっている(スピード表示は無い)。
確かに紙の本にしろ、電子書籍にしろ最大速度は読むほうが早いと思うのだが、いかんせん、その速度にムラがありはしないだろうか?私はADHD的資質のせいかもしれないが、とにかくムラがある。しかし、読み上げてくれる音声は常に一定である。結果的には1冊の本を読む(聞く)平均速度が上がり、しかも疲労度が小さいので、読了(聴了?)する冊数が大幅に増えた。
- 作者: ユヴァル・ノア・ハラリ
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2016/09/16
- メディア: Kindle版
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話題のベストセラー「サピエンス全史」。サピエンスは現生人類たる我々の学名ホモ・サピエンスから。人類史を概観する意欲的な本で各所で絶賛推薦中。面白そうと手にとっても、重い、と躊躇する人多いのでは?聴くのは楽ですよ。本書は文字情報量の多い図表が少なく、聴読向きだと思う。*1
著者曰く「歴史の道筋は、3つの重要な革命が決めた」と。その3つは、認知革命(7万年前)、農業革命(1万2千年前)、そして科学革命(500年前)。アフリカに出現したサピエンスは10万年前にはアフリカを出たが当時は他の人類たるネアンデルタール人に勝てなかった。ところが、7万年前から3万年前に再度アフリカを出たサピエンスは今度はネアンデルタール人を絶滅させ、その後他の人類を圧倒した。だからこの時期に他を圧倒する新しい思考と意思疎通の方法が登場したはずで、それが著者の説く認知革命。革命後のサピエンスは、遂には皆んなで共有できる神話や宗教を発展させ、その虚構の話を奉じて何万人もが協力して事を為すことができるようになったのだという。なるほど、と思う。
2.感情的なシーンで盛り上がれる
さて、読み上げの声は、抑揚がない。
イントネーションが存在しないのっぺりした機械音声だ。
機械音声は味気ないでしょう?
小説がつまらないでしょう?
と言われるのだが、実は全然違う。
声優などによるオーディオブックに比べ、抑揚のない音声が聞き手である自分の中に、内容がもたらす感情を自由に展開させる。声優さんではその場面に応じて感情生起を強制されてしまう。紙書籍と映像の対比に近いか…原作の映画化にコレじゃない、と感じたことあったらまさにそれ。
なので、知識を仕入れるのに音声読み上げを使うだけでなく小説もお勧めしたい。
- 作者: 司馬遼太郎
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2015/02/06
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西軍(事実上)総司令官三成の最期は抜群にかっこいい。対して東軍の家康、というより最高実力者になった家康になびこうとする武将の卑しいこと。とはいえ、豊臣秀吉への忠義や恩顧の念で戦う三成の視野は狭く、日本の統一を図り、国のビジョンを持ち得た家康が勝って良かったと感じてしまう。司馬遼太郎はちょっと家康嫌いが筆に出すぎているよね…。
3.英語のリスニング練習になる
日本語が良ければ当然英語も良い。
まあ正直なんだかんだ言って母国語でない洋書を1冊完全に読了するのはハードルが高いわけで、耳から勝手に入ってくれる方が楽なはず。それに英語の方は日本語よりも語の区切りがきちんと読まれるので、聞いていて機械音声の違和感は少ない。速度に関してはリスニング力にもよると思うが、dneuroの場合は恐らく0.8-2倍速程度で、やはり日本語よりは大幅に落ちる。 尚、英語学習者ではリスニングしながら読むこともいいのだろう。普通に読むよりもストレス無く持続できるのではないか。
amazon日本でもKindle用(アプリ含む)には向こうで買える書籍が網羅されているので、読みたい、と思った本が買えるはず。医科学系は専門書を含め、アメリカのほうが多く電子化されており、そういう意味でも有り難い。
https://www.amazon.co.jp/Tricked-story-internet-scam-English-ebook/dp/B00RBVDAD0/ref=sr_1_2?ie=UTF8&qid=1502840023&sr=8-2&keywords=trickedwww.amazon.co.jp
アメリカの高名な60代物理学者がネットを通じて知り合った20代のアルゼンチン女性モデルに騙されて、ドラッグの運び屋にされ、更にはアルゼンチン警察に勾留されてしまうという話。本人が書いている。下世話な部分がある方が読み(聴き)進めやすい。
著者は女性モデルとのやり取りは初めて会う約束をするに至るまで2ヶ月間何度もやり取りしており、当人とすれば騙されているつもりはなかった。話を外から聞けば騙されていることは明白なのだけど、寂しかったご本人の立場に我が身を置いた時、騙されずに済むかは正直わかりません。
本を聞くデメリット
欠点だって勿論ある。でも詳しくあげつらうと大変なので一言ずつ。
1.コストが高くなる
聴了冊数が多くなるから。電子図書館が欲しい。
2.図表を見ることができない。
必然的に。まあしょうがない。後で確認しよう。
3.何かに気になっていると内容がまるで入ってこない
上の空になると30分聞いた内容がふいになる。
4.寝落ちすることが多い
電車で目を瞑って聞こうと思うと難しい。寝床で聞くと寝落ちする。
5.漢字の読み方が変
慣れるとおかしみがあるというもの。大阪城⇛だいさかき、籠城⇛かごじょう、孔明⇛ひろあき、島々=しまくりかえし、現生人類=げんなまじんるい、などなど。
日本語版Audibleは全然足りない
昨年Amazonはaudibleのサービスを日本でも提供し始めた。その前から英語版のaudibleである程度の英語の本を楽しんでいた身としては大いに期待したが、残念ながら、試用期間を越えてお金を払ってまで使うほどのサービスでは無い。
その主原因は、日本語の電子書籍がかつて少なかったのと同様で、まだまだ圧倒的にコンテンツが足りない。
興味のある人は試しに読みたい本を検索すると良いと思う。
ほら、無いでしょう?
まだまだ本当に冊数が無くて、残念ながら寂しすぎ。
audibleのコンテンツは專門のナレーターや声優であったり、時に著者が本の内容を読み上げているため、iphoneに読み上げさせるよりも当然音声は情感豊かである。
それが機械音声により良いか?と言えば、先に書いた理由で、dneuroは読み上げアプリのほうがお気に入りである。
尚、英語版audibleは日本語版よりも遥かにコンテンツ数が多く、読みたい本も十分。英語リスニングのためであるなら、アメリカのAmazon.comにIDを作って利用すれば、こちらのほうは機械音声より確かな発音で聞けるのでお勧め。
小脳優位動作時に聞くといい
最後に聴読はいつするのがいいのか?
お勧めは、自動車運転中や散歩・ランニングなどの有酸素運動時、スーパーでの買い物(食料品)。いずれも、脳は覚醒しており、動作はどちらかと言えば自動的で1つ1つの手や身体さばきに言語化された内省を(余り)必要としない。こういった動きは小脳優位の活動だ。
自転車は安全の為にお勧めはし難い。また、電車通勤中は向いていると思いきや少なくても自分は眠ってしまう。座れずに立っている満員電車なら良いと思う。本を広げることも出来ないし、強制的に覚醒させられる。
http:// https://www.apple.com/jp/airpods/
- 出版社/メーカー: Apple Computer
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- メディア: エレクトロニクス
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聴読のお伴はイヤホンだが、中でもお勧めはBluetooth接続のワイヤレス。何でも良いと言えば良いのだが、iphoneもしくはipadユーザーならairpodsの使い勝手が最高だろう。装着感がとても良く、見た目と違って、耳から落ちることが皆無。dneuroはこれを使うことで、ほんのちょっとした合間でも聴読するようになり、読了書籍数が飛躍的に増えた。一部デザインを問題視する人もいるようだが(うどん、木霊、チンアナゴと言われる)、利便性の前に屈服。
*1:欧米の知の巨人(例えば「銃・病原菌・鉄」のジャレド・ダイヤモンド)はとにかく大著を書く印象。膨大な知識を元にした主張にはなるほどと頷くしか無いのだが、どこまでが確実な事実で、どこからが著者の仮説なのかわかりづらいことも。細部に登場するdneuroの専門領域では若干間違いもあったりすることがあるが、膨大な知識範囲は凄いとしか言えない。
*2:こんなこと言うのは無粋というものだが、司馬氏が事実を大事にして小説を書いたとはいえ、書かれた内容にはフィクションが多い。艶ごとなどは作者の人物イメージの投影でしかないでしょ?と時に言いたくもなる。また、「関ヶ原」執筆は昭和39〜41年。その後近年になっても400年前の文書が発見されるのは驚きで、かつて事実と思われていたことが覆ったり新たな可能性が出てきたりしている。dneuro的には、歴史小説の虚実がない交ぜな点に心理的抵抗を覚えるのだが、司馬小説が抜群に面白いのは確か。読了後には史上の人物の名前を覚え、一定のイメージを心に創ることができ、後に歴史物を読むのが楽になるのは疑いない。