夏休み書評2 電子書籍よ広まれ 

若い人も紙が好き

愛好家からするとまだまだ普及していないと感じる電子書籍

研究室のセミナーに来た医学部学生たちに聞いてみると、

「電子は読みづらいからやはり紙の本です」

と答えられたのが3年前。さらに、今年dneuroは講義資料として紙を配布するのを止めたが、一部からは不平が聞かれた。また、子育て中の身としては、本の導入には液晶よりも紙を選択するほうが自然だし、それが短期間に変化するとは確かに思えない。


ischool.co.jp


スマホネイティブに近い世代でもまだまだ本を電子媒体で読むことに慣れていないのねと感じるわけだが、電子媒体に慣れていないことを責めてもしょうがないので、どうすれば普及していくかを考えたいところ。


リンク先ではデメリットとして、値段の問題、端末の問題、読みづらさを挙げ、テキストベースでコンテンツを読ませるkindleアプリに変えてnoteアプリにすることを提案されている。


しかし、dneuro的には結局は出版をめぐる環境改善と端末技術の発展が電子書籍普及を後押しし、数年もすればずっと仲間が増えるだろうと確信している。



まずは漫画と雑誌だ

vdata.nikkei.com


少ない少ないと思う日本の電子書籍市場も実は世界2位の市場らしい。


米国が確かに圧倒的で、49.4億ドルだが、日本は2位で13.1億ドル、英国(10.1億ドル)、ドイツ(4.27ドル)、韓国(4.09億ドル)が続く。


一方で、市場伸び率はいわゆるBRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国)やタイ、トルコなど発展途上国が並んでいる。発展途上国を旅行してみるとわかるが、とにかく書店が少なく、本を手に入れるのが大変で、かつ専門書は全て英語でしか無い。*1
そういった意味で電子書籍市場が拡大しているのは個人的には必然と思える。


日本では出版不況が叫ばれる中でも、電子コミックや週刊誌市場が相当伸びている。


2015年には紙の週刊誌が電子書籍に追い抜かれているし(紙1454億円vs電子1584億円)、なにより電子コミックが急成長中で紙コミック売上の落ち込みを補っている。それに、日本が電子書籍世界第2位の市場というのはある意味見た目だけの問題で、電子コミックの比率が81%と非常に高く、先の世界市場13.1億ドルのうちコミックを抜かせば2.5億ドルに過ぎなくなる。恐らく他の国では日本のように漫画が読まれてはいないだろうから、「本」の電子市場は実際にはまだまだ小さいのだ。


とはいえ、それでも電子市場の拡大を漫画が牽引してくれれば個人的には文句ない。
実際dneuroも今漫画のほとんどを電子媒体で読んでいる。
大人なだけに(笑)ついまとめ買いしてしまい出費がかさんで困っているけど…。


電子図書館はとっくに始まっている

電子書籍の図書館でどんな現状?って調べてみると、実は知らない間にその動きは広まっている。それも結構前から。海外だけかと思っていたら…。

電子図書館のことを、もう少し本気で考えよう « マガジン航[kɔː]


でもまあ正直普通に使うにはまだまだ拡充度合いが今一歩。
圧倒的にコンテンツは足りない。
著作権の問題もあるだろう。
端末対応がPCのみに限定されていたりすることも多い。やはりスマホタブレット対応にならないと、普通の人は使わんと思うわけで。


個人的には、
 コンテンツの充足 (現在出版中の本が最低10万冊)
 スマホアプリで読める
 読み上げ対応
が条件かな。


国立国会図書館デジタルコレクション



暇つぶしに検索するなら国立国会図書館のコンテンツは面白いことは面白い。
歴史的なものを読んでみたければ…かな。


仲間と貸し借りさせて欲しい
 dneuroにとって紙の本の価値は、ほぼこの1点だ。
 読書仲間や家族と共有したいと思う本があったときに、紙の本であれば貸し借りができる。
でも電子書籍は??


この本良いから買ってみたら?と勧めるのはどうにも難しい。


コンテンツの充足したAmazon電子書籍の全てにレンタルサービスがあればそれを勧めるということができるだろう。Kindleunlimitedにある本なら事実上それが可能だ。



www.amazon.co.jp



こちらを使うなら、貸し借りしたい人が利用さえしてくれていたら。
Audibleよりもコンテンツが充足しているし、unlimitedの本は他のkindle本と同じアプリを使うので、聴読にも問題がない。


ただそれでもやっぱりコンテンツの充足感が無い。



個人的に改善・追加して欲しい3つ


・価格を安くして欲しい
洋書を検索するとわかるが電子は随分と安いことが多い。日本は著作権系の制約が多いのだろうが、もし電子書籍が紙の半額にでもなれば普及速度が爆発的に上がるはず。それに聴読して読了数が増えた身としてはお金かかってかなわんのですよ…。


・人にプレゼントできるように
 Amazon.comでならそれができる(⇛
Amazon.com Help: Purchase a Kindle Book as a Gift
)。日本でも早くサービス開始してくれ。家族、読書仲間、恋人、親戚、先輩後輩、仕事上の知人。本を贈りたい時ってあるでしょう?


・貸し借り可能にしてくれ
 次に貸し借り。
 購入時に、人と共有したい人は若干高く買えばできるというのはどうか。
 同じ本でも、専有して読むのであれば600円、人に貸し借り(同時には1人だけとかにして)する場合には700円、といったふうに。
もしくは例えばそういうサービスを受けたい人は年間幾らかをAmazonに支払い、貸し借り数(上限あり)に応じてAmazonは出版社(著者)に配分する。



というわけで今日は最近聴了した本をkindle unlimited対応本から。


珍夜特急1―インド・パキスタン―

珍夜特急1―インド・パキスタン―

unlimited利用し始めてまず選んだのはコチラ。タイトルは沢木耕太郎氏の
深夜特急(1?6) 合本版を思い出させるが、より退廃的な部分を含む。こちら
著者のクロサワコウタロウ氏は漫画家であり、全編バイクでの旅行記。若者の貧乏旅行らしく、行く先々でである人との交流が読ませるのだが、旅行にかかる費用、バイク修理の苦労、大麻への親しみと苦労話がリアル。2ndシリーズはアジアツーリングで知り合った仲間と一緒に南米旅行。合わせて15冊の大部は聴読で聞き流す入門に最適。


宇宙に外側はあるか (光文社新書)

宇宙に外側はあるか (光文社新書)

宇宙論が心地よく響く一定層がいるのだと思う。dneuroもそうだが、ビッグバン、インフレーション、ブラックホールダークマターといったキーワードに目が反応し、とりあえず読みたいと感じる。実際の所、宇宙論は壮大過ぎて、話を聞いても果たして自分の頭に展開している想像が正しいのかはまったくわからない。またどうやって数式からそんな話を展開できるのか?と何を読んでも疑問。最終章「宇宙に外側はあるか」がやはり一番そそられる内容。この宇宙でさえ、我々の銀河系のみならずその外側には幾つもの銀河が存在しその1つ1つに数え切れない星が存在している。そんな途方もないスケールのこの宇宙のさらに外側と言われても…。計算に拠って宇宙論の疑問が解決可能ならやはりAIがいずれは解き明かしてくれるのか。本書は図表少なくわかりやすい言葉のみの解説が続くので聴読向き。


軽いタイトルのライト・ノヴェルだが、当時の風俗・武器などに細かい解説が乗っかりつつ、幸村の工夫をオタクっぽく様々知ることが出来てお得感強い。タイトル通り源優希なる女子高生が戦国の世にタイムスリップし、家康と戦う大阪城豊臣秀頼の元に向かう真田幸村軍に従軍することになって云々。秀頼に殉じて自死した幸村の嫡男大助のファンなら、気持ちが安らぐので読んで見て欲しい。フィクションとはいえ。ちなみに関ヶ原で敗れた石田三成アスペルガーだったのねと主人公納得する下りがあるが、そうかもとは思わせる。

*1:発展途上国の書店に入って気づくのは母国語の專門領域図書の少なさ。逆に日本では日本語オリジナルの専門書が数多く、訳書も相当程度手に入る。こういう母国語でどんな専門知識も仕入れることが出来てしまう環境は多くの人間にとって専門知識へのアクセスを容易にする一方で、海外研究者とのコミュニケーションが取れない専門家を量産していることにつながっていると思う。もちろん、専門家なら意識を高く持って学習すればいいじゃんという意見は正しい。でも益川敏英さんが英語できないのにノーベル賞取っちゃったしな…。