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片頭痛予防について

何度も書くがdneuroは片頭痛患者でもある。
辛い発作の予防が出来ればと思う。片頭痛は診断から数十年は付き合わないといけない病気。きちんと診断されて治療をしていく必要がある。


1.まずは片頭痛の頻度を知ろう
何事もまずは情報。片頭痛治療をするにあたり頻度の情報は是非知っておきたい。
いつ、何をきっかけに、どの程度の強さで、頻度はどれくらいか。吐き気や感覚過敏など頭痛の随伴症状も一緒に記録する。そして、その状態の持続時間と何かで和らいだかどうか。発作的な症状を起こすどの病気でもそうだが、記録が詳細にあれば正しい診断と治療につながる。


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2.自分の片頭痛の誘因を知ろう
片頭痛には嫌な性質があって、ストレスがかかっている最中ではなくストレスから脱した後に頭痛がやってくるという人が多い。
ただ、注意してほしいのはこのストレス、何も精神的なものを言うだけではなく、肉体的負荷や、片頭痛持ち特有の「誘因」のことをいう。
Kelmanの論文(⇛The triggers and precipitants of the acute migraine attacks)に拠れば、誘因(trigger)として多いのは、(精神的)ストレス、ホルモン(女性のみ)、空腹、天候、睡眠障害、臭い、首痛、光、アルコール、夜更かし、熱、食べ物、運動、性行動*1らしい。人によってそれら誘因の数は1つから10個以上まで、非常にバラエティに富む。


私の場合は以下。*2


(1)太陽光
 日差しの強くなる春、片頭痛の頻度が増す。これは一般にも言えることで、季節の変わり目に、特に春、片頭痛頻度が増す傾向は確かなようだ。気圧の変化が…と訴える人も多い。


(2)長時間密閉された空間に、その空間には過剰な人数でいること
 会議室や狭苦しい空間。特にエアコンや換気扇が動いておらず、空気循環が無い状態で起こることが多い。CO2濃度上昇を可能性として。CO2は血管拡張作用を持つ。もっとも私には化学物質過敏もあるので、もしかしたらそちらが換気のない空間で症状を起こしている可能性も否定できないが。


(3)ある種の化粧品、塩素、ホルムアルデヒド、アルコール
 これ化学物質過敏症なのでは?という誘因だが、結果として血管拡張に至る作用を持つということだろう。ウルトラ下戸の私には、アルコール代謝産物のアセトアルデヒド片頭痛の誘因として強力だ。とりわけウイスキーで反応が物凄い。蒸留酒であるウイスキー醸造酒であるビールや日本酒、ワインに比べて酔いづらいと言われることもある中で、理由はよくわからない。同じ蒸留酒でも焼酎はずっとまし。


(4)光の点滅や風、特定の臭いなどある種の物理刺激
 陽光で無くても点滅する光に曝されるのは弱い。風に関しては昔、電車通学の時座っていると、開いた窓から吹き込むことがあったが、それに長時間当たっていることが誘因となった。扇風機の風などが偏って身体に当たっているときにも同様。またdneuroはマウスを使った研究をしているにも関わらず、マウスを飼育している部屋に入ると、臭いで片頭痛が誘発されるため、特殊なマスクが必要だ。*3


他に、一般的には、空腹、コーヒーやチョコなどのカフェイン含有物、女性なら月経などが誘因になる。だが例えばカフェインは多くの頭痛薬に配合されてもおり、治療的に働く人も多いので、やはり人によって誘因は違う。


3.予防薬はtryしよう
トリプタン系製剤という優れた頓服薬が出来たことで劇的なQOLの上昇が期待出来るようになった片頭痛だが、そもそも頭痛を防げればそれに越したことはない。誘因を避けるのは1つだが、予防薬を使ってもみるべきだ。発作頻度が高く、一度起こすと3日以上寝込んだり、トリプタン製剤の禁忌患者。さらにはトリプタンの副作用が強かったり、鎮痛薬の効果が小さい、経済的理由、などが予防治療の適応となる。


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日本頭痛学会のガイドラインから予防薬を見てみよう。
 慢性頭痛の診療ガイドライン2013



有効で、特に推奨される薬剤には、プロプラノロール(商品名:インデラル)、バルプロ酸ナトリウム(デパケン、セレニカ)、アミトリプチリン(トリプタノール)などがあがられている。
実際にdneuroが片頭痛持ちに出した経験では、プロプラノロールやバルプロ酸ナトリウムで奏効したことがある。もっとも劇的な人では、毎日のようにトリプタン製剤を使っています、という重症の片頭痛が、バルプロ酸ナトリウム200mgの服薬によって殆ど自覚しなくなった例がある。*4ただ、残念ながら自分自身には効果が無かった…。


さて、最近気になる論文が出た。最も権威ある医学誌の1つ、New England Journal of Medicineに出たその論文は、’Trial of Amitriptyline,Topiramate,and Placebo for Periatric Migraine’
片頭痛患者に、予防薬としてこれまでエビデンスがあるとされていたアミトリプチリン(トリプタノール)とトピラマート(トピナ)をプラセボ(偽薬)と比較したものだが、なんと3剤とも効果に変わりはなかった。どちらの薬剤もプラセボと比較して同等の治療効果しかなく、副作用だけ頻度が高かったので、途中で試験が中止されたほどだ。片頭痛持ちにとっては残念な報告と言える。
書いたように、予防薬の効果は人によってかなり差があると感じる。絶対の効果を期待できるわけではないが、それでも一部の人には確実に有効であり、副作用を確認しながらtryする価値はあると思う。


4.標準治療でない治療の模索は限界を作って利用する。
幾つか片頭痛治療において、いわゆる標準的医療ではない代替医療系の治療がある。それは例えば漢方薬(呉茱萸湯や五苓散など)、鍼灸、それからビタミン剤やマグネシウムサプリなど。さらに、有望かもしれないものに電気や磁気を使った治療。そして整体や気功等々…。


漢方や電気を使った治療に関してはまた機会を改めて紹介したいが、いずれにせよここに挙げたような治療に関しては、他を諦めたからといって盲目的にずっとし続けるのは感心しない。


代替医療を受けるコツは、確かに効く人は居るので、漢方や鍼灸、サプリなら2ヶ月、整体などやるならやるで最大6回までで効果を振り返ること。満足な効果もないのに延々と高額な「治療」を受けるのはナンセンスなので、そこは「治療者」の言葉に惑わされず、別なことを考えてみるべき。


ところで…
片頭痛を引き起こす誘因は徹底して避けるべきか?
確かに誘因を知ったら基本的にはそれを的確に避けるべきだろう。片頭痛は一度起こすと数時間〜数日に渡って調子の悪さが続き、あなたが発作を起こすことによる経済的損失は大きいはずだ。


だがそれでは、誘因をもたらす行動を諦めざるを得ない。
私の場合、陽光に関しては逃げてばかりもいられないので荒療治を行う。つまり、片頭痛が起きても翌日めげずにあたり続ける。学生時代テニスの合宿があると、決まって初日の夜は激しい片頭痛で駄目になっていたが、翌日以降片頭痛は起こさなかった。つまり強い暴露は感受性を鈍くし、片頭痛の予防になった。今でも季節の変わり目や、夏日差しが強くなった頃、1-2日は苦しい日を経て、慣れるようにはしている。これが片頭痛持ち皆に効くことではないかもしれないけど…。*5


サックス博士の片頭痛大全 (ハヤカワ文庫NF)

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オリバー・サックスの「偏頭痛百科」この前紹介したが新装再販されてました。お勧め。*6


症例から学ぶ戦略的片頭痛診断・治療

症例から学ぶ戦略的片頭痛診断・治療

こちらは専門家向け。症例が多いので参考になります。

*1:性交時頭痛というのが問題としてある一方、逆に片頭痛発作を楽にするという報告も2013年にあった。今いちはっきりわからないが、発作後に欲が強まるというのは経験する。神経伝達物質セロトニンの関わりのせいか…。

*2:こんな誘因があるために、私は日差しのもと、1時間も息子とボールを蹴ったりした後ダウンし、時に激しい片頭痛発作に襲われるのは家族にとっても痛い…。情けなさ感も半端ない。空気の対流が無いと辛いと訴えると私の身近な存在には鼻で笑われて辛いものがあるし、些細な感覚に頭痛が誘発される自分がまったく面倒な人間に思える。とはいえ昔よりマシですが。

*3:マウスを使う実験している研究者でありながら、マウスの飼育施設にいると頭痛が起きてくる。こういう自分を知ったのは学部学生の頃だが、大学院生時代は、特殊な有害物質用マスクをしながら実験をしていた。ハイラック555という、1枚500円以上するマスク⇛ハイラックマスク 555。同じ悩みの人(会ったことないけど)お勧め。

*4:頭痛薬を服薬しすぎていると、頭痛薬起因性の慢性頭痛という状態にもなってしまう。この方の場合その可能性も0ではないものの、バルプロ酸服薬によって本人の自覚する頭痛の頻度は激減できた。

*5:刺激を加えながらそれによって引き起こされる症状を緩和するのは花粉症の減感作療法のイメージに近い。私の場合、では他の刺激ではどうかというと、残念ながら慣れたりはしない。まあホルムアルデヒドやアルコールなどはそもそも代謝酵素が無いので当然とはいえ、慣れてくれたら嬉しいのに…。

*6:へんずつう」は片頭痛と書かれたり偏頭痛と書かれたり。片なら痛みは片側、偏なら痛みは偏っているというイメージか。理由はともあれ医学界では「片」頭痛。だからこのblogでもそう表記。そのせいかオリバー・サックス著作も単行本の時と表記が変わった。