怖い本から診断の難しさを知る

脳に棲む魔物作者: スザンナ・キャハラン,澁谷正子出版社/メーカー: KADOKAWA/角川マガジンズ発売日: 2014/05/31メディア: 単行本この商品を含むブログを見る 感動的で貴著な本。以前治る精神科の病気としてヘルペス脳炎を書いた。 実際、できるだけ早く診断…

糖尿病とアルツハイマー型認知症

糖尿病はアルツハイマー型認知症への大変強力なリスク因子になり得そうだというのは知っておいて良い。参考にするのは北九州は福岡県久山町の住民を対象にした大規模疫学調査、久山町研究*1。 アルツハイマー病と耐糖能異常:久山町認知症研究 これはそこから…

片頭痛は早めに診断してもらおう

筆者も抱える片頭痛、悩む人が多い割に、正しく診断されていない。 特に子供。何せ、頭痛というのは熱を出すでもなく、その痛みを検査する手段もない。完全に主観的な体験なので、頭痛に無縁な人にはまるで理解されない。 データが有るわけではないが、腹痛…

幼児期健忘ってなんだ?

認知症になっても古い記憶は保たれているという。だから、認知症の介護において、自分の歴史の中の古い部分を引き出すことは、良い介護にも繋がる。自分が知っていることを相手に伝える、ということは自尊心を保つのに役に立つ*1。では一体どのくらい古い記…

漢方ってなんだ?

現代医学的エビデンス至上主義者にとって漢方に代表される東洋医学というのは現代医学頭にとっての収まりが悪く、言ってみれば敵対的な存在だ。条件を統制した上での結果を積み上げる現代医学と、そもそも条件統制の発想がそぐわない東洋医学との会話は噛み…

ヒトはなぜワクチンを疑うのか? (1)

インフルエンザワクチンの季節だ。精神科臨床医の私が言うのもなんだが、ワクチンは接種したほうがいい。少なくても公衆衛生的には効果が明らかだ。なのに、接種しないという人がいるのも事実。それも結構多い。なぜそうなるのか今日は少しだけ考えてみたい…

詐欺治療に騙されるな

世の中には詐欺療法がはびこっている。あなたがそれに騙されないためのキーワードを紹介しよう。 どんな癌でも治る、免疫力をアップする、気の流れを正す、 邪気を取り除く、生命エネルギー、現代医学では治せない、 学会では認められない、誰もが習得できる…

生物学的検査は精神科臨床に役に立つのか (1) 

精神科医はおしなべて身体疾患の医師を羨ましく思う時があるはずである。 それは、身体疾患が客観的指標で診断を付けられるし、治療効果も数値で追えることが大部分であることにほかならない。時々「日本消化器内視鏡学会雑誌」というマニアックな雑誌をパラ…

片頭痛と経済損失と思い出

片頭痛は苦しい病気だ。 頭痛はただでさえ辛い。片頭痛はその頭痛時(発作という)にそれだけでも痛いというのに、吐き気と時に嘔吐に襲われる上、音や光に過敏になり、暗い部屋で悶え苦しむハメになる。 そんなに苦しいのに余り理解はされない。製薬会社エー…

アルツハイマー型認知症でも残る記憶

アルツハイマー型認知症は記憶力を失っていく。 だがどんなことも記憶出来ないのか? アルツハイマー型認知症を発症すると新しい出来事を記憶する力(記銘力という)を障害する。その理由は、主に海馬と呼ばれる組織とその周辺が萎縮するためであり、例えばこ…

薬について

精神科というと、カウンセリングのイメージが強く、薬の処方に違和感を覚える人もいる。何か訴えに対して、薬を出してオシマイと考えているんじゃないかしらと疑念も抱くだろう。 それは当然だと思うし、ましてや薬が多くなることに対して、不安や拒絶感を持…

精神疾患って原因あるの?

精神疾患というのは、多くの人にとってよくわからないもの。 と同時に、医者にとっても実はよくわからない。 わからない、というのは、多くの精神疾患の原因がこれだけ医学・医療の進んだ世の中において判明していないから。 そう、実はほんとに原因がわから…