インチュニブが成人に適応拡大_インチュニブの作用について

つい先日ですが、抗ADHD薬の1つ、インチュニブ(一般名:グアンファシン)が成人に適応拡大されました!


これはこれまでADHD症状に対して、使えた薬が成人ではコンサータ(一般名:塩酸メチルフェニデート)とストラテラ(一般名:アトモキセチン)の2剤のみだったことを考えるととても喜ばしいことです。薬の選択肢が増えました。今までは18歳未満にしか適応が無かったんですよね。



インチュニブは何が違う?


ここでちょっと薬の働き方を考えてみましょう。


専門的な解説は成書に譲りたいところですが、現在日本で使える3剤を大雑把に分けると、ドパミン系優位に効くか、ノルアドレナリン優位に効くかというように分けられます。ここでは、脳の中でも前頭葉に対する薬の働きに着目してみます。


f:id:neurophys11:20190621095618j:plain

図にあるように、脳の前の方にある前頭葉、ここは言ってみれば脳全体の指揮者のような存在で、私達が「自分」であるためにとても重要な脳領域です。機能としては、神経活動を一方向に向かわせてしっかり働かせる注意機能現在必要な情報を保持して今の状況に対処する作業記憶気持ちの波を制御して落ち着つかせる情動制御、などが挙げられます。



そう、ADHDはこういった前頭葉の機能に弱い部分があるから、不注意であったり、衝動性が高かったりする、と理解されています。



そして、図の右側にあるように、脳を構成する神経細胞は、その接続部(シナプス)で神経伝達物質という化学物質をやりとりしてお互いに連絡しています。色んな種類の神経伝達物質がある中で、抗ADHD薬のターゲットとなるのがノルアドレナリンドパミンというわけです。


ノルアドレナリン濃度調整をするのがインチュニブとストラテラ


で、前頭葉ノルアドレナリン濃度を調整するのが今回成人適応になったインチュニブと、これまでも使えたストラテラになります。


ノルアドレナリンはその濃度が適正範囲にあると、前頭葉神経細胞に、しっかり働けよ、こう働くんだぞ、という司令がしっかりと伝わるのに役立ち、要するにノルアドレナリン前頭葉の機能強化をするのが役割です。


ドパミン濃度調整をするのがコンサータ



一方、ドパミン濃度調整に強く働くのがコンサータです(ノルアドレナリンの調整も担います)。


ドパミンは、前頭葉では、神経細胞が刺激に的確に反応するよう、ノイズになりうる余計な刺激が今やっていることに邪魔しないように神経活動を調整します。それによって、前頭葉神経細胞はしっかりと持ちうる能力を発揮できるというイメージでしょうか。言ってみればドパミン神経細胞のチューニングを担うのです。


f:id:neurophys11:20190621100153p:plain


さて、そんなわけで、インチュニブは、ストラテラと同じく前頭葉ノルアドレナリン濃度を調整してくれる薬剤というわけです。



では、ストラテラと同じなのか、というとインチュニブは神経細胞ノルアドレナリン受容体(α2A受容体)に最も強く選択的に働く薬であり、それだけ高い効果も狙えるわけです。



次回,インチュニブの用量や、副作用などについて。




昭和大の岩波先生。


しっかりADHDを知りたいという方には勧めています。

大人のADHDを扱った書籍でインチュニブについて出てくるのはまだ先でしょうね。


マンガでわかる 大人のADHDコントロールガイド

マンガでわかる 大人のADHDコントロールガイド

ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に働くための本

ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に働くための本


自分のADHD気質を理解しながら職場での適応を高めていくことを考えたときにはこんな本たちが良いのではないでしょうか。
ただ、對馬さんの本は、中身はとっても良いのですが、ボリューム感があって、読み進めるのには努力がいるかも。当事者同士で抄読会とかやると一番いいかもと思ったりします。
(ちなみに、對馬は「ツシマ」と読むようです。難しい...)