インパクトファクターってなにさ?
非研究者の同僚から「インパクトファクターって何?」と聞かれたことがあります。
終わってしばらく経ってしまったけど、同僚が見たのは二宮和也くんのブラックペアン。
そう、ドラマでは佐伯教授と西崎教授がインパクトファクターを争っていましたね。
論文掲載を争っていたのは「日本外科ジャーナル」。えーとまあここに関しては...
和雑誌なんてインパクトファクターがとても低いので、その掲載を争うか?
争うなら海外一流誌への最初の投稿でしょう?
両教授の持っているインパクトファクター(70点台)が低すぎるよ?
とツッコミどころが多いのですが,それは置いておきましょう。
ところでインパクトファクターとはなんぞやと
さくっと言っていまうと、論文の価値の指標であり、インパクトファクター(Impact Factor:略してIF)が高い雑誌=一流誌とみなされることが多いのです。
で、掲載している論文が過去2年どのくらい引用されたかを示す指標です。
例えば、ある雑誌Aジャーナルの2017年のIFの計算は、
(2015年と2016年に掲載されたAジャーナル掲載論文の、2017年の総引用回数)➗( 2015年と2016年にAジャーナルに掲載された引用可能な総論文数)
となります。
優れた論文は他の論文にも根拠として引用されていくので、引用される論文が多く載っているほど良い雑誌、というわけです。
そして、このIFが高い雑誌に載ることが一流研究者の証ともみなされるのですよ。
例えば皆さんご存知のNatureやScienceですが、最新の2017年のIFを調べるとNatureが41.577、Scienceが41.052。
これはとっても高いIFです。dneuroがこの前学生さんと一緒に書いた論文はNeuroscience Letter誌に掲載されましたが、同誌のIFは2.159。
Natureのざっくり20分の1ですよ。IF稼ぐとしたら効率が悪い.
研究者はそのレベルが、自分の名前の掲載された雑誌のIFの総数で判断されたりしますが、NatureやScienceに一本でも載せることができたら、ちまちまIFの低い雑誌に何本も論文を掲載することよりも一気にIFを稼ぎ出すことができるのです。
図は、dneuroの精神科分野におけるIFインパクトの私的感覚です。雑誌に掲載されたときのIFに応じての気持ちも書いておきました。目安ですけどね。
インパクトファクターは絶対の指標か?
例えば、医学部の教授選では候補者のIFの高低が選考の指標になったりしています。実際他分野の人間にとってはどの雑誌に載ったのか、とか論文タイトルとその内容から、論文の質を判断するのはとても難しいというか事実上不可能なので、IFってわかりやすいんです。
でも、このインパクトファクター、その多さのみで研究者としての価値が測られると実は危険です。
IFの弱点とはなんでしょう?
雑誌にとっては、
・研究者人口がいない分野では高くならない(優秀な論文でも引用回数が少ない)
・創刊間もない雑誌では不利(まだ引用数少ない。逆に今IFが低い雑誌でも成長していくことがある)
・雑誌側はIF上げたければ自雑誌掲載の論文引用を著者に促したり、掲載論文数を少なくしておくことで一定の操作が可能
・IF上げたくても、掲載論文数が多ければ、個々の論文の引用回数が減るので、上がりづらい
1つ1つの論文としては
・論文の質は担保されない(単にIFが高い雑誌に載っただけ)
・IF高い雑誌に載っても間違いはある(小保方論文とか)
・業界では信用があったり、意義が認められてたりで価値が高いのにIF低いので他分野や非専門家に価値をわかってもらえない
などでしょうかね。
要はIF高い雑誌だから価値が高いとか、論文の質が良いと判断するのは早計ってことです。
医学系では、例えば循環器(心臓)分野にはIF高い雑誌が沢山ありますが、研究者数が少ない寄生虫学とか、論文が専門的過ぎて引用しづらい放射線科などではそもそもIF高い雑誌が少ない、ということにもなります。渡海くんの外科手術の分野もそんなに高くはありません。手術の技術的論文を読む人は限られているからね。
研究者的にはIFが高いことだけ狙ってもしょうがないことは自明の理であって、IFが低い雑誌でも載せた論文は高度に専門的で、自慢できる論文があったりするのですが、それでもIF高いに越したことはないよな、とジレンマに悩むわけですよ。
インパクトファクターの調べ方
さてさて、そんな研究者の気持ちを揺さぶるインパクトファクターを調べたいときにはこちらをどうぞ。
気になる研究の載った雑誌名(英語)を入力すればOK。
結果に関しての注意は書いた通り。
でもやっぱインパクトファクター高いと嬉しいんだよな...という正直な感想を言うのはちょっと恥ずかしい。
IF以外の指標はないの?
色々書いた通りIFで研究者や論文を評価するのはマズイと誰もがわかっているので、他にも考案されてます。詳しくはこちらなんか。
でもね、中々普及しないんですよね。インパクトファクターほどのインパクトが名称にないし、分かりづらいんだろうなと。
ちなみに、研究者自身の評価を探る指標としては、
h-index
なんてのもあります。
研究者のSNS、Research Gateで調べると、どうやらdneuroは19です。
これは、19回以上引用された論文が19本はある、ということらしいです。20回以上引用された論文は19本未満、と。
どうなんだろう、少しは誇っていいのか、大したことないって思われるのか、全然だめなのか、さっぱりわからない。
まあ人の客観評価なんてそもそも難しいのです。
世の中には、強烈に頭が良くて、みんなから尊敬されているけど、自分の論文はさっぱり発表しない研究者もいるのですから...。
最後に研究者のSNS、Research Gateはこちらから。知っている有名研究者を探してもいいかもしれません。
研究室で生きている方法が書かれているようだ。
レビュー見ると役に立つようだから、研究室にこれから入る学生さんや院生さんは参考にして良いかも。
私にとてはこちらのほうが馴染みがあるけど。
dneuroはこの手の本は読んだこと無いけど、きっとアクセプトされるコツが書いてあるはず。
指南本は読めばコツがわかって先に進みやすい気もするし、一方で、読んだ内容に縛られてしまわないかな、とも思ったり。
前にも紹介しましたが、これは読んでてドキドキすること間違いなし。ヤン・ヘンドリック・シェーンというドイツの若者がScienceを筆頭に次々と材料工学系の論文を捏造投稿し、一躍ヒーローになっていたことがあるのですよ。NHKでスペシャルを見たとき、彼の嘘がバレていく過程が、不謹慎ながら強烈に面白かったのですが、何故彼がそこまでしたのか、は結局わからず。