コンサータやストラテラをめぐる葛藤について

・薬を使って良くなっても意味が無いのでは?
・依存症にならないの?
・もう絶対やめられないのではないか


ADHDの方に薬を使うというとき、特に勉強している家族の方からはこんな疑問を呈されることが多い。一方、医者の立場からすると、ADHDには薬が有効であり、どちらかといえば積極的に使用した方が良い場合が多く感じられる。しかし、薬を使う、ましてやADHDというどちらかといえば疾患というよりも特性(性質)上の問題に対して、薬を使うことに直感的に躊躇し、葛藤する人は多いし、その感覚そのものは健全だと思う。


なので、自らの、もしくは子供を含めた家族のADHD特性に対して薬を使うとはどういうことなのか、改めて考えていきたいと思う。


決心だけじゃどうにもならない
ADHDの3主徴として、多動・不注意・衝動性が挙げられることが多い。


adhd.co.jp

ストラテラ(一般名:アトモキセチン)を発売しているイーライリリー社の作ったページだが、コンパクトにまとまっているので見て欲しい。
3主徴とは具体的には…
不注意として、例えばケアレスミス、人の話を聞けない、部屋の片付け、約束の時間に遅れる。
衝動性として、不用意な発言、衝動買いや重大な物事の簡単な決断。
多動として、部屋を出ていってしまう、そわそわしている、おしゃべりが止まらない。


「心がけ」や「もっと注意をすること」で解決可能なことばかりじゃないかと思う人、多いのではないか。


そう、1つ1つなら確かにやる気でどうにかなるかもしれない。実際に軽いADHD特性があるだけなら、工夫次第で、もしくは理解ある周囲のサポート次第でどうにかなる。特定の能力に秀でていたり、稀な能力を持っていれば、ADHD特性のほぼすべてを許容してもらえる人もいるだろう。


が、ADHD特性も一定程度以上になると、やる気の問題では解決できず、サポートをする側の苦労も並大抵ではない。決意を促すご家族も、一念発起を繰り返す本人も、行動改善が難しいのはとっくに承知と思う。それは、「やる気」だけではどうにもならない、実行機能障害という特性があるから。さらにその背景には、ノルアドレナリンドパミンという2つの神経伝達物質が働くべき脳の局所で、足りないという理由があり、自分の力ではどうにもコントロールできない。


  ⇛ ADHDに関する10の誤解(神話)_前編


ADHD者はなかなか快感を感じられない(報酬を報酬として感じづらい)という特性があることも以前紹介したが(⇛学習できないのは報酬系の不全が問題)、こういった脳の特徴もまた自分ではどうにもできない。


大人のADHDワークブック

大人のADHDワークブック


最近、ADHDの方にはこの本を紹介することが多い。
ADHDの概説の他に、日常生活上の様々な工夫への情報が書いてあるが、12-15章は薬に関して当てられている。


著者が紹介しているアメリカの研究(P.139)では、大人のADHDに対して2つの群を比較してみたという。1つは、大人になってからADHD診断を受けた群(大人診断群)。もう1つは子どもの頃にADHD診断を受けた群(子ども診断群)。
大人診断群は、子ども診断群より機能が高い傾向がある一方、特に不安やうつ症状を併せ持っていることが多かった。これは、それだけ長い間治療を受けず、ADHD特性に苦しんでいたのではないかと推測できる。
子ども診断群は、学業や仕事がうまく行かず、反社会的な行動やドラッグに走る傾向にあったという。早期に診断を受けたということは、それだけ特性(症状)がより重かったのではないかと推測。
(注)その研究の元にしたデータの頃には十分な早期診断や対処が確立されていたわけではないから、早期診断がされるようになった現代では子ども診断群が必ずしも症状が重いわけでも、その行く末に反社会的行動が待っている、というわけではない。


特性に苦しみ続けるのは理不尽だと思う
ADHD特性を持っているから、といってそれに苦しみ続けるのは不当だろう。
その特性が軽いとは言えず、明らかにハンデになっている場合、その改善を本人や周りの支援者の責任にのみ負わせるのは理不尽で、過酷だとdneuroは確信している。それを駄目というのは、近視の人には眼鏡、四肢切断の人には義足(義肢)の使用を禁ずる、というのに近いのではないかと感じる。


その上で、冒頭3疑問の答えはすべて’否’なのだが、それは次回。
尚、言うまでもないが(でも残念なことに)、薬は何でも解決する万能薬ではなく当然ながら日常の工夫と、多かれ少なかれ環境調整は必要とする。


マジック・ツリーハウス 第24巻ダ・ヴィンチ空を飛ぶ (マジック・ツリーハウス 24)

マジック・ツリーハウス 第24巻ダ・ヴィンチ空を飛ぶ (マジック・ツリーハウス 24)

小学生に人気のマジック・ツリーハウス。ジャックとアニーが今回会うのはレオナルド・ダ・ヴィンチダ・ヴィンチは、興味があちこち飛ぶ、新しい実験を次々行う、作品を完成させない、などの性質からADHD疑惑がある(本当の所はわからないと思うけど…)。そんなダ・ヴィンチさんがミケランジェロに「お前は何一つ完成させていない」となじられて落ち込む姿を見せるのがかわいい。
仮にダ・ヴィンチADHDだったとして、薬を使うと創造性が消えるようなことになったのか、それとも未完作品が少なくなったのか…。