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睡眠薬はやめられるのか?

睡眠薬はやめられないんでしょう?とはよく聞かれる疑問だが、率直に言えば「止めるのが簡単な人もいれば、難しい人もいる。人さまざま」というつまらない答えが正しい。


睡眠薬をやめられないとすれば、それは退薬症状(離脱症状とも)や反跳性不眠という現象がおきてしまうことが1つ。もう1つは、睡眠力というか、睡眠状態に脳を移行させる力が回復しきれていない、ことによる。


dneuroはやめたい患者さんには、服薬を始めた時には失われていた睡眠力が無事に回復していることが睡眠薬を中止するためには必要であり、回復していれば、中止による退薬症状に数日耐えればできますよ、と言うことが多い。


さて…


睡眠薬は沢山あれど、今使用されている睡眠薬の殆どはベンゾジアゼピンという種類に属する。かつて催眠作用は強いが毒性が強く、大量服薬によって命の危険があったバルビツール酸系という睡眠薬があったが、dneruoが医者になった頃には睡眠薬ベンゾジアゼピン系であった。


一方で、最近になり、構造的には似ているものの、睡眠薬の働くGABA受容体(GABAはギャバ、と読む)にちょっと違った形で作用する非ベンゾジアゼピン睡眠薬が登場した(代表は商品名マイスリー)。さらに、睡眠ホルモンとも言われるメラトニンと同等の働きをするロゼレム(商品名)が、2年前には催眠というより覚醒を邪魔するオレキシン製剤ベルソムラ(商品名)が登場した。


   上記睡眠薬により詳しく知りたければ…
   睡眠薬の強さの比較。医師が教える睡眠薬の選び方


ベンゾジアゼピン睡眠薬とそのやめ方
上記サイトにも書かれているが、ベンゾジアゼピン睡眠薬はどのくらい身体に留まって作用するか、によって分類されている。


超短時間作用型…ハルシオン*1
短時間作用型…レンドルミンリスミーデパス
中時間作用型…サイレース/ロヒプノールベンザリン
長時間作用型…ドラールダルメート   (全て先発品の商品名)


である。ハルシオンならば身体から抜けるのに2-4時間だが、長時間作用型のドラールであれば24時間以上だから、何を飲むかによって身体への残留時間が全く異なる。そして一般的に作用時間が短いものほど入眠作用が強く、言い換えれば切れ味が鋭く、そのために依存になりやすい。ただ中時間作用型に分類されるサイレース/ロヒプノールも程々長く続く割に入眠作用も強く、つまりは切れ味良く、そのせいで依存状態になっている人はよく見かける。切れ味が良い薬ほど、急に失った時の退薬症状(≒離脱症状)も強いために、依存が形成されやすく、止めるのが難しい。


とはいえ、長く服薬していても止めることは可能であり、それにはやめたいという意志と、上手なやり方の両方を必要とする。


精神科の薬がわかる本 第3版

精神科の薬がわかる本 第3版


この本はわかりやすくて良い精神科薬の解説本だが、そこで提案されている3つのやりかたは図にも示した3つ。



1.用量漸減(ぜんげん)法
2.回数漸減法(図では隔日法)
3.置換中止法

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1.は段々用量を減らしていく。急がずに数週間かけてやめていく。


2.は飲む頻度を減らしていく。1日おきに飲んでOKか確認。眠れるようなら2日おきを試して、段々日数を空けていく。


3.は薬を変えていく方法。依存状態になりやすいのは超および短時間作用型の睡眠薬だから、まずはそれを長時間作用型の薬に変えていく。多種類のベンゾジアゼピン睡眠薬が使われているなら、まずは単剤を目標にまとめていく。入眠や深い睡眠に支障が出るようなら、一部の抗うつ薬が睡眠を深くすることがわかっているので、そういった薬も併用していく。


以上のやり方で焦らずにやめていくことはできるはず…。*2


睡眠薬を続けるというデメリット
ところで睡眠薬を飲み続けるデメリットはなんだろう?
それは副作用、退薬症状、そして薬を使うという気持ち悪さ、かなと。


副作用としての、過鎮静、筋弛緩作用が強いことによる転倒、薬が2日酔いのように朝残ってしまい覚醒不十分になること、その結果として日中の注意力低下、などは留意すべきものだ*3。こういったことがあるのなら、即刻減量や中止、もしくは別作用の薬への置換を考えるべき。


あるいは、睡眠薬が無いと眠れない場合、飲めない状況になった時困るだろう。例えば病気により入院して絶飲絶食とされたとき。
この場合、急に薬が身体から抜けたことによる退薬症状が激しく出てくることがある。いらいら、落ち着かなさ、不安、けいれんやせん妄がそれにあたる。


そして、勿論薬を使わなくては眠れないという事実に対する気持ち悪さ。
薬が必要なくなればそれはそちらのほうが良いに越したことはないわけで…。


睡眠薬は絶対に無くさなければいけないのか?
最後、ここに来てそもそも論になってしまうが、私は以下を原則にしている。


1.まずはすんなり苦痛なくやめられるかは試してみよう。
2.沢山の同系統の薬を飲んでいるなら、それは種類を少なくしてみよう。
3.その上で、無理して猛烈に頑張ってまでやめる必要は無い。


ま、結局は眠れるのが一番なので、少ない種類の薬を少量必要としているくらいならそんなに頑張って無くさなくてもいいんじゃないかな〜と。


グリシン 1000mg 海外直送品

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最近睡眠サプリとして甘いアミノ酸グリシンが有名になった。味の素が「グリナ」の名で3gを睡眠作用のあるサプリとして発売して注目されてから。研究界隈ではもともとグリシンは鎮静作用があるのはわかってたが、統合失調症に1日60gとか使う研究が多く、3gという少量で効くとしたら驚き。とはいえ眠れない人は試してみても悪く無い。3g程度なら副作用は恐らく無いし、「グリナ」は高い…。

*1:今日blogに載せたのは全て先発品の商品名。化合物の名前は一般名というが、ハルシオン(トリアゾラム)、レンドルミン(ブロチゾラム)、デパス(エチゾラム)、サイレース(フルニトラゼパム)、ベンザリン(ニトラゼパム)、ドラール(クアゼパム)、ダルメート(フルラゼパム)。メラトニン製剤ロゼレムの一般名はラメルテオン。ベルソムラはスボレキサント。 最近の処方箋はこの一般名が書かれていることが多く、またジェネリック医薬品は一般名そのままであることも多い。

*2:中にはあっさりやめられる人もいる。実際睡眠薬なんて、眠れれば飲まなくていいわけで、多くの患者さんには「自分で調節していいですよ」と伝える。但し、躁状態や幻覚妄想状態など、睡眠が絶対的に必要な場合は別。

*3:ベンゾジアゼピン系の薬は抗不安薬としても使われる。不安を和らげる作用を期待して日中も服薬するわけだ。注意すべきは、自覚的に眠気を感じていなくても注意力が低下し、反応速度が遅くなっていることがあることで、運転など特に慎重でありたい。