午後の昼寝は正当化されていい
午後は眠い。
だから、最近は午後短時間、すなわち10〜20分くらいの睡眠を取るといいなんて言われるが、本当だろうか。
アメリカではいくつかの記事で20分程度の昼寝をpower napと呼んで推奨している記事が多い。
有力紙の1つWall Street Journalではこんな記事。
The Perfect Nap: Sleeping Is a Mix of Art and Science
www.wsj.com
記事の中では、20分、30分、60分、90分で昼寝の効用が違うと。20分は良い仮眠の一方で、30分になると睡眠慣性(睡眠を続けようとする力;急に起こされると眠いというやつ)が働いてしまうし、60分は良いがしばしば寝起きが辛く、90分は睡眠サイクルに合うから良いと。さらに、昼寝は13-16時が良く、少し上体が起きた姿勢でアイマスクをすることを推奨。こういった昼寝を取ることで睡眠不足を一定程度補えるという。
そういえば医者は良く昼寝をしている。色んな病院の医局(医者控え室と思っていい)を覗いてみると、お昼は寝ている人実に多い。ある医者はソファに座り、別な医師は自分の机で。私も病院勤務時代はほぼ毎日どっかで20-30分寝ることにしていた。
・人は午後、どうやら眠いらしい
そう、午後は眠いからホントはちょっと寝たほうがいい。
2001年のイタリアの研究では高速道路における居眠り事故と時刻の関係を調べているが、事故が一番多いのが午前3-5時、そして次のピークが午後2-4時になっている。当然午後眠いからだ。
アメリカのブラウン大学教授Mary A. Carskadonは時刻による人の眠気を調べていて、それによると8時間睡眠後の翌日、どの年齢層も13時〜15時半くらいの午後の時間に最も眠いことがわかる。10時間睡眠でも多くはそうだが、7-11歳は一切眠くならず、また8時間睡眠の時よりも眠気の年齢差が明確になっている(7-11歳は元気いっぱいで羨ましい)。
ということで、午後、人は眠くなるらしい。
そして、それは基本的には年齢によらず、かつなぜかははっきりわからない*1。
そこらへんのまとめは広島大学大学院総合科学研究科教授の林光緒先生のまとめが面白い。
例えば⇛ 居眠り運転発生の生理的メカニズム(論文pdf)
ともあれイタリアやスペインのシエスタは生理学的には圧倒的に正しい。
・昼食は実は関係ない
この午後の眠気、「ご飯食べたから〜」という人が多い。
1つよく言われるのはご飯を食べると、消化管に血流が取られて、脳に行く血流が減るから、という説明をする人がいるが、これは間違い。実際は脳に行く血流が食事程度で変化はしないようなメカニズムを我々は持っており、確かに食べれば消化管活動が増えるから血流は一定程度増すだろうが、脳に行く血液の絶対量が変わるということは無い。
もっとも、食べることで消化のために自律神経系の中でも、副交感神経系が亢進し、それが眠気に関わるというのはあるかもしれない。副交感神経系は交感神経系と並ぶ自律神経系だが、リラックスするために働く神経系でもあり、一定の眠気に寄与する可能性はあるんじゃないかと思うのだが。
さて、というわけで、皆さん昼を食べると眠くなるから〜なんて言うけど、関係ないからお昼は食べていい*2。
色々と睡眠に関係する物質はあるが、実際のところこの午後の眠気に絶対的に関与する物質はよくわからない。いずれにしても人は午後眠くなるし、眠くなったら短い仮眠を取ることが作業効率を上げると近年よく言われるようになった。仮眠有り無しで作業をさせるような研究からそれは確かなようだ。
十分な睡眠時間がしっかり取れるなら、一定程度この眠気が和らぐのは確かだが、そうそう十分な睡眠が取れないのが現代なので、午後の短時間仮眠、試せる人は試して欲しい。
トイレで寝ている皆さんは実は多い様子。
堂々と眠れる環境が整えられますように…と願わずにはいられない。
ちなみに、仮眠前にコーヒー飲むと、カフェイン吸収が仮眠後の眠気覚まし(難しく言えば睡眠慣性の力に負けないで済む)になるので、良いと言われている。
睡眠の科学―なぜ眠るのかなぜ目覚めるのか (ブルーバックス)
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睡眠に関する適切な正しい知識はこの本を読めばわかる気はする。
まあただ適切な睡眠というのも人それぞれであってあまりこれが正解というのは無いし、仕事によっては、いくら「こうしたほうがいい」と言われても出来ないことがしばしばあるだろう。大体異性と過ごしたいのは夜だし、夜型なら仕事捗る夜に休んでいるだけじゃ力もつかない。
なので、「眠いのに睡眠時間をどんどん削る」生活だけは長く続けないよう、何らかの工夫を、午後の仮眠含めて方策を取るべきだと思う。
これまでの経験では、どこでもいつでもちょこちょこ眠れる人が最強、という気がする。