実際に見たり聞いたりという体験が他人と共有できるかわからないという話

認知行動療法を受けたいという方、あなたは自分が見ている世界が真実1つだけでないことに向き合わなければいけません。


とりあえず有名になったこの画像を見てみよう。


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「この色は何色にみえる?」というのがtwitterでの議論から随分と有名になった。見え方は次の2通り。
   ① 青と黒
   ② 白と金
このどちらかにしか見えないのが普通なので、①を選んだ人は②の選択肢があり得るとは思えないし、逆も然り。
私には「青と黒」にしか見えないが、「白と金」にしか見えない人がいて、しかもそう見える人の方が多い(!)という。私の研究室でも5対2で「白と金」派が多く、「青と黒」派は分が悪かった。ホントは青と黒のドレスなのに!。
このように分かれる理由は以下のリンク参照だが、要はドレス周囲の環境をどのように脳が認識するかの問題。


あのドレスで色が分かれる理由


次に動画。


www.youtube.com



回転しているチャップリンのお面だが、どうだろう、裏側になったときにも引っ込んでいるはずの鼻が出っ張って見えたのではないだろうか。
ホロウマスク幻視(錯視)とも知られる現象で、検索してもらえればもっと極端に見えるものも引っかかる*1


聴覚でも1つ。


こちらもyoutubeから。

www.youtube.com


このシャッター音、多くの人には「♪撮ったのかよ!」と聞こえる…と思う。少なくても私の周り皆そうだった。
が、人によっては「エーアイアイ」と聞こえるという。


実はこれは朝日放送探偵ナイトスクープ」のネタ。

『携帯電話からエーアイアイ!?』


ある操作をすると、誰にでも「エーアイアイ」と聞こえるそうだから、是非探して見てみて欲しい。
ちなみに、子どもや外国人にはそう聞こえる可能性高し。


さて、今日は結局何が言いたいのかというと、認知行動療法では、何かストレスな出来事に直面したときに、即座に沸き起こってくるネガティブな考えを「自動思考」と名づけてそれを把握、修正していくという練習をする。

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認知行動療法をにわかには受け入れがたいという人は多分、この自分の自動思考への信頼が高過ぎるのだと思う。自分が把握している(=認知している)世界を疑うなんてあり得ないという実感。


そんな時今日紹介したような画像・音を違う認識で捉えている人もいることを知っていれば、あなたの頭に浮かぶ自動思考も真実では無いかもよと考えられないかな…と。


錯視・錯聴に興味のある人はこちらにも

イリュージョン・フォーラム

認知行動療法のすべてがわかる本 (健康ライブラリーイラスト版)

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*1:この錯視、統合失調症患者には見られないという(⇛ Neuroimage. 2009 Jul 15;46(4):1180-6 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19327402)。ただ、全員というわけではない。健常者にも実は見えづらい人はいて、その頻度が統合失調症だと高いということだろう。確認したいものだけども。