ADHDの辛さ
ADHDの特徴といえば、「注意欠陥、多動、衝動性」だがそれらをベースにし様々な問題行動を起こす。
どっちにしろ、あちこちに注意が飛ぶADHD児、特に多動症状が強いとこんなことになる。
- 幼少期より片時もじっとしているということができない
- やりかけのことがあっても視界に入ったものに即座に衝動的に飛びつく
⇛ 物事を最後まで終えられない。
小学生に上がれば、
- 教室でじっとしていられずふらふら歩き回る。
- 人の話を聞けず途中で邪魔したり、脈絡のないことを思いつきで話し始める。
- 忘れ物、失くし物ばかり。
といった感じで、こんな子が1人ならまだしも2人もいたら(いや1人でもか)学級崩壊の起点になりかねない。
問題行動の数々とそれによって生ずる心理的な問題はこれを見てみよう。
#1 小児期「ADHDの正しい理解のために」 - YouTube
問題行動を「わざと」と捉えられれば(実際そのように見えたりもするのだが)、教師も親も叱ってばかり、一度叱っても繰り返すのでますます叱られる。それだけでなく、周囲は詰めたい視線を向け、本人は自分はダメな奴と落ち込み、いじけてしまい、また繰り返す…という悪循環にはまる。
そんなわけでADHDの子供たちは、心に傷を負っている…のだが、基本的には脳天気に見える子供も多く、どちらかと言えば周囲は「うるさいやつ」「忘れ物ばかりするやつ」といったマイナス評価だけをしがちで、本人の心の傷に気づくことはしばしば困難だ。
とりわけ「劣等感の醸成」は本当に厄介で、何をやっても人に評価されない、疎まれるという感情は後々の弊害を強くする。
何をやっても失敗する
そんな感情が強くなれば、その子は萎縮し、ちょっとわからないことを人に聞けば解決するのそれができず、学習が中途で終わるため、持っていたはずの能力が開花しない。
のみならず、
どうせ俺(私)は嫌われる
という被害感情が強まれば、人を信用しない(できない)人格形成がなされ、やがては本当に嫌われる人間になりかねない。
どうすれば、というヒントはこの前紹介した前頭前野の成長曲線にあると考える。
(http://neurophys11.hatenablog.com/entry/2016/01/16/091632)
ADHD児の脳は発達が定型発達児に遅れるが、後に追いついていく*1という図だが、四角で囲った期間(矢印)即ち8歳〜12歳前後の間に様々な意味での学習の遅れを取り戻すことができるのでは、と。その時期までにADHD児の特性からくる困難に、本人はもちろん親や教師が諦めていないことが大事なのだろう。
特に親はやはり一緒にいる時間が長いだけに、生活の様々な場面でADHD児の特性を踏まえた対応が必要で、それに関してはまた次の機会に。
*1:以前紹介したとおりこれは米NIHの研究者Shawらの研究による。その後も幾つかのこれを支持する報告があったり、日本の研究者中尾らによる大脳基底核の発達の遅れとその後のキャッチアップなどの報告もある(http://ajp.psychiatryonline.org/doi/abs/10.1176/appi.ajp.2011.11020281)。臨床的に考えれば、ADHD児に発達の遅れが後に追いつくのはとても大きな希望である。そして養育/教育側にその意識があれば、幼少期の注意欠陥・多動といった特性に対しては寛容になれるのではと思う。教育の入っていく時期が定型児より遅れるのだ(から、ガミガミ言うだけでは意味が無い)。