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辛さは知ってほしいが負けるわけにもいかない(2)

「化学物質過敏を治療したい/治療して欲しい」


dneuro自身化学物質過敏のためやはり自分の化学物質過敏(
以下MCSとする: Multiple Chemical Sensitivity)を治したいと切に願っている。
でも、正直言ってMCSは治すものではない。多分一度発症したMCSはそうそうは治らない。現代社会に生きる身としてMCSだからといって化学物質は全て避けるべきものではないし、MCSだからと言って何も出来ない状態に陥るべきではない。私なりに心がけていること、わかってきたことを書きたい。


1. 残念ながらこれを飲めば症状消失!みたいな薬は存在しない。


エビデンスのしっかりした治療薬が存在しないことは確かだ。いわゆる解毒薬としてビタミンCやタチオンなど処方が考えられるが、効果を期待しすぎてはいけない。間接的に、対症療法的に症状を和らげるという意味では鎮痛剤、抗不安薬、抗てんかん薬、自律神経調整薬(敢えて言えばβブロッカー)が役立つことはある。自分の感覚からすると一部は片頭痛に似たメカニズムが働いているかなと感じるが、正しいかははっきりわからない。MCSは2次障害的に抑うつや不安を誘発するので、その場合抗うつ薬抗不安薬は役に立つだろう。


2. 症状を誘発する化学物質への暴露はできるだけ避けるべきだ。


MCSであれば症状を誘引する化学物質を避けさえすれば症状が緩和されるはずで、それが診断の決め手の1つにもなる。MCS者は非常な低濃度で症状が誘発されるが、「代謝の遅れ」*1が原因でなければ、多くの場合その場から離れるだけで症状が劇的に改善される。とはいえ、一旦誘発されるとそれまでに平気だった物質にも反応するようになっていそうで、厄介だ。


3. でも化学物質溢れる現代社会を否定しては生きていけないし、そうすべきではない。


時々、全ての化学物質を批判したり、逃げようとする方の言葉が目立つ。でも、現実的に全ての化学物質暴露を防ぐことは不可能で非現実的だし、あなたは世捨て人になりたいわけじゃないだろう。それに安全な化学物質のほうが遥かに多いのだ。


4. だからMCS症状の誘発物質はできるだけ特定したい。


何が症状を誘発するのかの予測なしに、暴露を避けることも難しい。だから1つ1つ同定していくことはそれが可能であれば望ましい。単に物質というだけでなく、環境であったり(化粧した女性が集まるPTA集会などは危険筆頭だ…)、家具や文房具、写真集などの既成品全体を避ける必要があることも。結局その環境下の揮発性化学物質総量が問題になったりもする。


5. MCSの症状でとりわけ辛いのは、だるさ、疲労感、集中力低下、眠気であり、生産性を著しく低下させる。


 肩痛や眼痛・頭痛・関節痛などが辛いのは辛いのだが、それらがある意味我慢さえすればなんとかなるものであるのに対し、集中力低下や眠気はとりわけ仕事を不可能にし、ああもう寝てしまおうと睡眠に誘う魅惑的な症状だ(なんて、表現はできない辛さがあるのだが…)。
 この眠気に負けてはいけない。ひどい時にはなかなか気づけないものだが、その眠気は症状なのだ。だからその場から離れ、新鮮な空気を吸いに行こう。


6. 運動や汗をかくことは症状の緩和に役立つ


 参考⇛[化学物質過敏症] 完治した人・大幅に改善した人たちのとった方法
    (http://matome.naver.jp/odai/2137033352070229901)


 このことについて強力なエビデンスがあるわけではないと思う。しかし、MCSと共存しながら生きていくために体力は必要である。体力は症状に負けない予備力を身体に備えさせ、そして恐らく運動により体脂肪が減少すれば化学物質の脂肪への蓄積を少なく出来るだろう。運動そのものに抗うつ効果や抗不安効果もある。発汗した汗中化学物質量の信頼できるデータが存在するか分からないが、私の感覚として汗をかくような辛い料理を食べると何となく症状が和らぐ気はする*2



7. 周囲には、特に家族や職場の人にはとりあえず知っておいてもらおう


 MCSは定義上多くの人にとって何も反応を起こさない低濃度の化学物質に反応する。つまり、圧倒的多数の人があなたの症状を理解しない(できない)。なので、きちんと状況を説明した上で周囲には理解してもらったほうが良い。でないと、内科的に何の検査異常も示さない以上、メンタルの問題としか捉えてもらえない可能性は常にある。単なる怠け者にならないためには理解を得よう。特異体質の人間とみなされることを楽しもう。ただし、最初は優しい周囲もいつまでもぐたっとしていると次第に冷たくもなるだろうから、暴露回避策や自分なりの対処法は不可欠。残念ながら場合によっては転居・転職を余儀なくされることもあるだろう。


どう考えてもMCS発症は理不尽である。生活に制限が生ずるだけでなく、周囲の理解も得にくい。それにたとえ原因がわかったところで企業やその環境の責任者を訴えても、国の基準どおりに化学物質濃度を抑えていると言われるオチできっと負ける。だから個人としてのMCS対策は1つ。回避的になりすぎることなく、どうすれば生活ができるのか、前向きに出来ることに取り組んでいくべきだ。


化学物質過敏は辛い、非常に辛いが、負けてはいけない。

*1:人体に入った化学物質は肝臓や腎臓で酵素により「代謝」を受けることで解毒化され、体外に排出される。例えばアルコールは肝臓において主にADH、ALDHといった酵素を経て解毒されるが、それらの活性程度によって下戸が生ずる。MCSの症状発現においてはこの「代謝」の遅れでは説明できない症状が多い印象ではある。下戸の人がアルコールを摂取すると症状が極めて長く続くが、MCSの場合その場を離れればすぐに症状が消失することがあり、それは代謝っぽくない(とっても感覚的感想だが…)。

*2:汗をかく、自律神経を動かす、という意味以外に、辛い食べ物はもしかしたら脳内神経伝達物質(ドパミンやノルアドレリン)を直接分泌させる可能性もありそうだ。