ヒトはなぜワクチンを疑うのか (2) 

インフルエンザの流行を都が認めたらしい。自分もそろそろ打ちたいが今年は不足しているインフルワクチン。今回は以前書いた続編を。 ヒトはなぜワクチンを疑うのか(1) 初めにdneuroの立場を表明するとすれば、ワクチンは一定の感染症を予防し、不幸な感染者…

認知症の治療 捉え方を変えてみよう

先ごろ「認知症の治療」というお題で講演依頼を受けた。・いわゆる4大認知症(アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症、そして血管性認知症) ・現在市場に出ているアリセプト(塩酸ドネペジル)を主体とした認知症治療薬 ・治る認知症を…

ハンドスピナーとADHD,それに行動経済学

巷で話題の、というともう遅れているが、子どもに買ったハンドスピナーを自分が気に入って回していたりする。 ハンドスピナーには色んな種類があり、それぞれにちょっとした違いがあるためにコレクション心が揺さぶられてしまうのだが、気になるのは広告に書…

将来必要なのはきっと整形外科医だけ

以前、AIの発展に伴って精神科医は20年後には生き残れないと書いたが、最近はますますそうじゃないかな~と思う。 www.huffingtonpost.jp いや、人間に打ち勝ったアルファ碁をさらに100戦全敗に追い込んだアルファ碁ゼロなどの記事を見るとその感は強くなる…

今年のノーベル賞と概日リズム

海外に旅行すると時差ボケが強くて困る人と大して問題ない人がいると思う。 dneuroはもともと時差ボケが強いとは思っていなかったが、大学院生時代に参加したアメリカ西海岸のサンディエゴでの学会。5日間のうち2日は時差ボケのせいか眠気がものすごく、ほと…

プラセボは効いてしまう(1)

薬効の証明は二重盲検試験を経なければならない 現代の薬の効果判定の最終プロセスは無作為二重盲検試験というやつで、このサイトがわかりやすい。 臨床試験・治験に特有の仕組み アーカイブ - 臨床試験・治験の語り ある新薬Aの効果を知りたい時に、Aと味も…

きっとあなたも信じている医学神話

医療とその技術はすべてエビデンスに支えられているべき エビデンスとは読んで字のごとく証拠ないしは根拠であり、医療技術はその1つ1つに根拠があるべきだといいたい。何を当たり前な、と感じる人は現代に生きる若者だからであり、エビデンスに基づいた医療…

無届けさい帯血医療のニュースで偽物医療に思うこと

www.nikkei.com 先日、他人のさい帯血を国に無届けで投与したとして東京渋谷のクリニックの医師を含めて6人が逮捕されたようだ。 さい帯血(⇛Wiki)はへその緒に含まれる胎児血液のこと。これを使った代表的な治療対象は、白血病であり、骨髄移植に並んで、移…

嗜銀顆粒性認知症で説明つくのかな

認知症の種類を問うと4大認知症と答える方が多い。アルツハイマー病(型認知症)、脳血管性認知症、レビー小体型認知症、そして前頭側頭型認知症。 しかし、臨床をやっているとどうにも当てはまらない人が出て来る。dneuroは外来のみだがそれでもこの10年、ほ…

夏休み書評2 電子書籍よ広まれ 

若い人も紙が好き愛好家からするとまだまだ普及していないと感じる電子書籍。研究室のセミナーに来た医学部学生たちに聞いてみると、「電子は読みづらいからやはり紙の本です」と答えられたのが3年前。さらに、今年dneuroは講義資料として紙を配布するのを止…

夏休み書評1:本は読むより聴いてみたら?

もうこの3年ほど、dneuroは本を、目を使って読む冊数が大幅に減った。 一方で、Amazonのkindleストアで購入する本は増えた。読まずにどうしているのかと言えば、最近は専ら聞いている。 使うアプリはiphoneのkindleアプリ。www.b-chan.jpiphoneの場合、やる…

認知症にならないってできるのか、とかキツネのはなしとか

アルツハイマー病(アルツハイマー型認知症)の臨床をやっていると、何が進行速度の決め手になるのか?という疑問を持つ。画像上は萎縮像が確かに診断の参考にはなるし、ある程度は萎縮の程度が認知症の状態と相関関係にあるのはわかる。 ただ、萎縮が目立つと…

自殺数10万人超えのデマと自殺統計をつらつら見て考える(1)

自殺数に関してwebで検索していると気になる記事が結構あって、その中には日本の自殺者数は本当は10万人を超えているみたいなエントリに当たる。例えばこんな⇛【マジかよ】毎年報道される日本の自殺者数は3万人どころじゃなかった!? 「遺書が無いと自殺で…

オキシトシンと自閉症〜オキシトシンはどうなっている(2)

前回はNature誌の論説を紹介したが、現浜松医科大学精神医学教授の山末氏らのグループはオキシトシンの臨床試験を日本で行っており、一定の効果を得たという発表が2015年にあった。www.amed.go.jp その山末氏がやはり同年にPsychiatry and Clinical Neurosci…

オキシトシンはどうなっている?(1)

愛情ホルモン、オキシトシンがASD治療に有効だと言われて久しい。 臨床治験も現在進行中だし、ASD治療薬(と書くのは抵抗があるのだが、それは後述)としてのオキシトシンの現在地を確かめたい。 オキシトシンについて オキシトシン(⇛Wiki)は脳下垂体(図参照)…

ビッグデータ活用するには情報が正しい必要があるよね...

以前20年後には精神科医がいなくなり始めるといった内容を書いてまあまあ読んでくださっている方もいるようで有り難いのだが、幾つかビッグデータとかAI系のサイトや解説本を読んで考えることを。 cs.sonylife.co.jp AI活用例として、遺伝子解析、総合診療支…

ワクチンと自閉症、あれこれ

「ワクチンと自閉症」でググると当blogの「自閉症の原因はワクチンや水銀じゃないよ」が結構上の方で出してくれるおかげでアクセス数が多い。有り難い一方で、トランプ米大統領の発言のせいか、ワクチン=自閉症原因説が話題になることが多くなっている様子。…

オーダーメイド治療は精神科ではまだまだ先になりそうだ

薬物療法において、薬が効くか効かないか、それが予測できればどれだけいいだろう。前回紹介したアメリカの抗うつ薬効果研究(STAR*D)では、最初の治療薬(シタロプラム)で寛解まで至る患者さんは約1/3だった。現在使える抗うつ薬はSSRI、SNRIといった頻用され…

うつ病とモノアミン仮説

モノアミン仮説と製薬の歴史 先だってコメントに書かれた、モノアミン仮説(⇛週刊現代の精神科薬批判は的外れ)。 モノアミンとは(脳科学辞典参照)、アミノ基(-NH2)と芳香環(亀の子です)を化学構造に持つ神経伝達物質で、うつ病に関連しては、セロトニンとノル…

遺伝子情報、知りすぎてどうする

日経サイエンス2017年6月号出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社発売日: 2017/04/25メディア: 雑誌この商品を含むブログ (1件) を見る 今月の日経サイエンス「新生児ゲノム検査の期待と不安」から。 2010年テキサス州、キャメロンと名付けられた赤ちゃんは新…

正常圧水頭症の予後を考える

正常圧水頭症といえば「治る」認知症として紹介されることが多い。 正確には特発性正常圧水頭症。特発性というのは、特別な原因がない、という意味で、なぜ水頭症になったのかはわからないということ。水頭症は、脳神経が浸っている脳脊髄液が、適切に排出さ…

遺伝が関係無いはずは無いわけで…(2)

遺伝子の発症は環境によって左右される 同じ遺伝子群を持っていても、病気が発症するわけじゃないというのはこの前書いた。 話としてわかりやすいのは、dneuroが専門ではない、癌かなと思う。 癌、というのは細胞が本来なるべき細胞として成熟しないで無限増…

遺伝が関係無いはずは無いわけで…(1)

病気って遺伝するんですか?はよく聞かれる質問で、それは以前書いたように性格と同じでyes and no (⇛セロトニントランスポーターは日本人気質を決めているか)。気にする余り、結婚はしないほうがいいとか、子どもは産まないほうがいいとか、短絡的な発想し…

授乳中は全ての薬を止めるべき?

妊娠と授乳中における精神科の薬については、当たり前だけれども皆さん不安が強いようで、しょっちゅう聞かれてしまう。今日はそのうち、授乳と薬についての話題を中心に。 お母さんの精神状態ファーストだ 授乳と薬について考える時の原則を書けばこんなと…

開発中のアルツハイマー病治療薬はどうなった?

つい先日ヤフーでこんな記事があったので、気になったことなどを。news.yahoo.co.jp 記事内容は概ね頷ける。確かにアルツハイマー病(アルツハイマー型認知症)の治療薬は失敗続き。特にアルツハイマー病の原因は、加齢とともに、アミロイドβ42というタンパク…

ためしてガッテンに見る医療情報伝達の難しさ

NHKのためしてガッテンは普通の医療関係者にとって、時に評判が悪い。個人的には認知症をもたらす正常圧水頭症について取り上げられた途端に「うちのおじいちゃんもそうじゃないんですか?」というご家族の質問が続いてやや閉口したことがある。*1 info.ninc…

発達障害特性独自の強みについて

発達障害についてはやはり「障害」と括られることで否定的なことが書かれることが多い。発達障害の持つ特性が障害になる一方かというと、そんなわけでも無いというのが今日の論点。実際の所、あぁこの人ASDだなあという偉大な人はそれなりにいるし、ADHDを公…

優しい薬物療法を目指したい (2)

良い薬物療法はあなたに優しいはず さて、良い薬物療法はある意味悪い薬物療法の裏返し。 正しい診断のもと、症状を緩和したり治すのに十分に効果を望める必要最低限の量、可能なら出来るだけ少ない種類を。定期的で、十分な副作用対策(副作用対策は薬だけと…

優しい薬物療法を目指したい(1)

精神科や心療内科に訪れた方が時々口にするのが、「カウンセリングじゃ駄目なんですか?」という問いで、その言葉を聞く度に、精神科というイメージが持つ誤解や、時間制約のある現代精神医療の中では薬物療法が中心にならざるを得ないことや、名医と言わず…

知って面白い医学史

医学史は面白い。それは不謹慎だが人体実験の歴史だし、今から見るとまさかそんなことを権威じみた偉い人達が言っていたんだ、と当然こちらは後出しじゃんけんなのでずるいのだが、正しい治療に至るまで苦闘の歴史が偲ばれるというのもあるのかもしれない。 …