ビッグデータ活用するには情報が正しい必要があるよね...

以前20年後には精神科医がいなくなり始めるといった内容を書いてまあまあ読んでくださっている方もいるようで有り難いのだが、幾つかビッグデータとかAI系のサイトや解説本を読んで考えることを。 cs.sonylife.co.jp AI活用例として、遺伝子解析、総合診療支…

ワクチンと自閉症、あれこれ

「ワクチンと自閉症」でググると当blogの「自閉症の原因はワクチンや水銀じゃないよ」が結構上の方で出してくれるおかげでアクセス数が多い。有り難い一方で、トランプ米大統領の発言のせいか、ワクチン=自閉症原因説が話題になることが多くなっている様子。…

オーダーメイド治療は精神科ではまだまだ先になりそうだ

薬物療法において、薬が効くか効かないか、それが予測できればどれだけいいだろう。前回紹介したアメリカの抗うつ薬効果研究(STAR*D)では、最初の治療薬(シタロプラム)で寛解まで至る患者さんは約1/3だった。現在使える抗うつ薬はSSRI、SNRIといった頻用され…

うつ病とモノアミン仮説

モノアミン仮説と製薬の歴史 先だってコメントに書かれた、モノアミン仮説(⇛週刊現代の精神科薬批判は的外れ)。 モノアミンとは(脳科学辞典参照)、アミノ基(-NH2)と芳香環(亀の子です)を化学構造に持つ神経伝達物質で、うつ病に関連しては、セロトニンとノル…

遺伝子情報、知りすぎてどうする

日経サイエンス2017年6月号出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社発売日: 2017/04/25メディア: 雑誌この商品を含むブログ (1件) を見る 今月の日経サイエンス「新生児ゲノム検査の期待と不安」から。 2010年テキサス州、キャメロンと名付けられた赤ちゃんは新…

正常圧水頭症の予後を考える

正常圧水頭症といえば「治る」認知症として紹介されることが多い。 正確には特発性正常圧水頭症。特発性というのは、特別な原因がない、という意味で、なぜ水頭症になったのかはわからないということ。水頭症は、脳神経が浸っている脳脊髄液が、適切に排出さ…

遺伝が関係無いはずは無いわけで…(2)

遺伝子の発症は環境によって左右される 同じ遺伝子群を持っていても、病気が発症するわけじゃないというのはこの前書いた。 話としてわかりやすいのは、dneuroが専門ではない、癌かなと思う。 癌、というのは細胞が本来なるべき細胞として成熟しないで無限増…

遺伝が関係無いはずは無いわけで…(1)

病気って遺伝するんですか?はよく聞かれる質問で、それは以前書いたように性格と同じでyes and no (⇛セロトニントランスポーターは日本人気質を決めているか)。気にする余り、結婚はしないほうがいいとか、子どもは産まないほうがいいとか、短絡的な発想し…

授乳中は全ての薬を止めるべき?

妊娠と授乳中における精神科の薬については、当たり前だけれども皆さん不安が強いようで、しょっちゅう聞かれてしまう。今日はそのうち、授乳と薬についての話題を中心に。 お母さんの精神状態ファーストだ 授乳と薬について考える時の原則を書けばこんなと…

開発中のアルツハイマー病治療薬はどうなった?

つい先日ヤフーでこんな記事があったので、気になったことなどを。news.yahoo.co.jp 記事内容は概ね頷ける。確かにアルツハイマー病(アルツハイマー型認知症)の治療薬は失敗続き。特にアルツハイマー病の原因は、加齢とともに、アミロイドβ42というタンパク…

ためしてガッテンに見る医療情報伝達の難しさ

NHKのためしてガッテンは普通の医療関係者にとって、時に評判が悪い。個人的には認知症をもたらす正常圧水頭症について取り上げられた途端に「うちのおじいちゃんもそうじゃないんですか?」というご家族の質問が続いてやや閉口したことがある。*1 info.ninc…

発達障害特性独自の強みについて

発達障害についてはやはり「障害」と括られることで否定的なことが書かれることが多い。発達障害の持つ特性が障害になる一方かというと、そんなわけでも無いというのが今日の論点。実際の所、あぁこの人ASDだなあという偉大な人はそれなりにいるし、ADHDを公…

優しい薬物療法を目指したい (2)

良い薬物療法はあなたに優しいはず さて、良い薬物療法はある意味悪い薬物療法の裏返し。 正しい診断のもと、症状を緩和したり治すのに十分に効果を望める必要最低限の量、可能なら出来るだけ少ない種類を。定期的で、十分な副作用対策(副作用対策は薬だけと…

優しい薬物療法を目指したい(1)

精神科や心療内科に訪れた方が時々口にするのが、「カウンセリングじゃ駄目なんですか?」という問いで、その言葉を聞く度に、精神科というイメージが持つ誤解や、時間制約のある現代精神医療の中では薬物療法が中心にならざるを得ないことや、名医と言わず…

知って面白い医学史

医学史は面白い。それは不謹慎だが人体実験の歴史だし、今から見るとまさかそんなことを権威じみた偉い人達が言っていたんだ、と当然こちらは後出しじゃんけんなのでずるいのだが、正しい治療に至るまで苦闘の歴史が偲ばれるというのもあるのかもしれない。 …

医学生は将来ダークサイドに落ちないでね(2)

部活も大事だが、思考法もちょっと磨いてみて欲しい。*1 ダークサイド、というと悪いことを自覚的にしているようにも思えるが、実際には効かない医療を信じ込んでしまっている場合があったりする。自分の経験や、「独自の研究」から導いた結論を信じ込んでし…

医学生は将来ダークサイドに落ちないでね(1)

研究者の中で気の置けない仲間と話していると、時折「あぁあの人はダークサイドに落ちたね」と語ることがある。 それが他のグループでもそうなのかはわからないが、分かる人はわかると思う。ダークサイドに落ちるとはなに?と疑問抱くかと思うが、我々の仲間…

綾野さんと認知症の記憶について

綾野さんは手強かった 綾野さんはアルツハイマー型認知症。大正生まれ。 dneuroは老人ホームの嘱託医なのだが、入居した方にはまずは何か精神・神経的な問題を抱えていないかを診察する。 綾野さんの診察時、看護師からの依頼があった。 「とにかく頑固で、…

2016年も早く過ぎた人へ

あけましておめでとうございます。今年も精神科系や心理系を含めた医療系の話題について神経科学者と臨床精神科医的視点から書ければと考えています。 さて、まあ毎年のことながら、2016年も早く過ぎ去って、やりたいことのどれだけができたんだろうと些かの…

発達障害臨床雑感

この1年、自分のいるクリニックでは発達障害の診断や現在抱えている不適応や気分障害・不眠など精神科的症状に悩む人の受診が増えた。国際的な診断ツールである、ADOS-2(本人対象)やADI-R(養育者対象)を用いての出来るだけ客観的な自閉症鑑別の手段を使って…

ADHDの薬は何が理由で飲めなくなるか?

前回のblogに書いた、多くの人が持つ疑問、2つに関連して今日は書きたいと思う。 その2つは… ・依存症にならないの? ・もう絶対やめられないのではないか どうしてそんな疑問が出てくるのかと言えば、ADHDに使う薬、特にコンサータ(メチルフェニデート徐放…

コンサータやストラテラをめぐる葛藤について

・薬を使って良くなっても意味が無いのでは? ・依存症にならないの? ・もう絶対やめられないのではないか ADHDの方に薬を使うというとき、特に勉強している家族の方からはこんな疑問を呈されることが多い。一方、医者の立場からすると、ADHDには薬が有効で…

片頭痛予防について

何度も書くがdneuroは片頭痛患者でもある。 辛い発作の予防が出来ればと思う。片頭痛は診断から数十年は付き合わないといけない病気。きちんと診断されて治療をしていく必要がある。 1.まずは片頭痛の頻度を知ろう 何事もまずは情報。片頭痛治療をするにあた…

不老の薬があるかもしれない

研究の講演で将来を夢見ることができることはもう10年位なかったのだが、つい先日目の覚めるような話を聞くことができたので紹介したい。 過日このようなニュースがあったのをご存知だろうか。 www.konekono-heya.com ネコはどうも腎不全になりやすいらしく…

片頭痛の発作時治療

以前も書いたが、片頭痛は辛い。 発作は耐えきれないような頭痛とともに吐き気を伴い、光や音に対する過敏性を持つことで暗い中にじっとしていないといられない。 片頭痛に関して、その経済的損失が莫大であること、特に子供においては診断までに時間がかか…

ADHDに関する10の誤解(神話)_後編

7.実行機能の発達的な障害であるというADHDの新しいモデルは、旧来のADHDモデルとは全く異なっている。 ⇛ADHDの新しいモデルは、本質的に幼い子どもの行動障害だという旧来のモデルとは多くの点で異なっている。新しいモデルではADHDの問題は、子供だけでな…

ADHDに関する10の誤解(神話)_前編

注意欠陥多動性障害(ADHD)といえば、多動、不注意、衝動性が3大症状として挙げられるのが標準的。ただ、実はその3つだけが本質というよりも、以前書いたような報酬系の不全(⇛学習できないのは報酬系の不全が問題)とともに、総合的に何か課題をこなすだけの実…

ASDは治療するものなのか

ASDに関する報道をみていると、例えば「オキシトシン」で自閉症の治療につながるという報道がある。以下は東大のプレスリリースではあるが*1。 www.jst.go.jp 「治療」というのを、病的な状態から健康な状態に復する、という定義で考えているとすると、ASDに…

奇跡の医療と腸内細菌

奇跡的な治療ってあるんですか?と聞かれたことがある。でも奇跡は日常診療では中々得られることがない。救急医療を思い浮かべる方も多いと思うが、それでも奇跡はなかなか起きない。私は救急医療センターで集中治療室の医師として勤めた経験がわずか半年な…

アルツハイマー型認知症と鑑別が難しいレビー小体型認知症

レビー小体型認知症はこの数年急に市民権を獲得してきた。 dneuroが医学部の頃、すなわち1990年代後半はこういった認知症が提唱されつつある、というまだ良くわかっていない認知症として習った覚えがあるが、現在では頻度の高い認知症として認知されている。…

ドラマ「無痛」と先天性無痛症

久坂部羊の「無痛」を原作にフジがドラマにしているが、重要人物の1人(イバラ君)が先天性無痛症だという。 無痛 (幻冬舎文庫)作者: 久坂部羊出版社/メーカー: 幻冬舎発売日: 2008/09メディア: 文庫 クリック: 11回この商品を含むブログ (51件) を見るドラマ…

20年後に多分精神科医の殆どは要らなくなり始めると思う

AI、人工知能に関してのニュースが最近目立つ。 dneuro的にはこの数年将棋のプロ棋士がソフトに負け続けており、ほぼ人間が敵う状態には無い(羽生さんが負けて決着となるだろうけど)ことや、ついには碁までAlpha碁というソフトに完璧に打ち負かされたことが…

睡眠薬はやめられるのか?

睡眠薬はやめられないんでしょう?とはよく聞かれる疑問だが、率直に言えば「止めるのが簡単な人もいれば、難しい人もいる。人さまざま」というつまらない答えが正しい。 睡眠薬をやめられないとすれば、それは退薬症状(離脱症状とも)や反跳性不眠という現象…

認知症でトイレを失敗する理由

認知症の方の外来をしていると、トイレを失敗してしまうのはなぜ?という疑問を聞かれることがある。 認知症のタイプにもよるのだろうけど、ここではアルツハイマー型認知症で考えてみたい。 アルツハイマー型認知症というと、「おじいちゃんボケてきたかし…

平成28年度診療報酬改定は精神科における多剤併用大量療法を駆逐するか?

精神科医療界には多剤併用大量療法という問題があった(今でも無いとはいえない)。 日本精神医療の黒歴史の1つ。 多剤併用大量療法だった日本 特に統合失調症治療において、幻覚・妄想を和らげる抗精神病薬を複数、その副作用対策としての抗パーキンソン病薬…

週刊現代はまたか…

週刊現代は的外れな医療批判を繰り返している。 今回も読んでみたが、なんというか、コピーの如く同じ批判を号を変えても繰り返すのは能が無い。いや他の出版社もまた的外れな現代医療批判を繰り返しているから、やはり医療批判が売れるコンテンツなだけだろ…

彼の責任能力は問題になりそうか

2016年7月26日早朝、主に行動障害を伴う知的障害者が入居する福祉施設で痛ましい事件があったのは周知の通り。夜中に侵入した犯人は19人を殺害、26人に重軽傷を負わせた上で自首し逮捕、すでに送検されている。 戦後最大の殺人事件だが、それ以上に容疑者の…

午後の昼寝は正当化されていい

午後は眠い。 だから、最近は午後短時間、すなわち10〜20分くらいの睡眠を取るといいなんて言われるが、本当だろうか。アメリカではいくつかの記事で20分程度の昼寝をpower napと呼んで推奨している記事が多い。有力紙の1つWall Street Journalではこんな記…

週刊現代の医学批判を考える

どうも週刊現代は医療批判に目覚めたようで、このところ特集が続いている。 今回は第一部として、「内視鏡・腹腔鏡手術の真実」、「医者が切りたがるがんも本当は手術しないほうがいい」。 センセーショナルな見出しと内容を見たければかなりな程度ネットで…

学習できないのは報酬系の不全が問題

ADHD(やASDもだが)の子と接していると、褒めても通じないということがよくある。叱るんじゃなく褒めて行動を増やそうと実践するのに、褒めた行動が次につながらない。やっぱり次も同じ行動を起こしてしまうことが重なり、ついには怒ってしまう。おかしい…と…

精神科の薬物療法はこれからも進歩するのか?

精神科治療において治療の中心に位置する薬物療法。精神科医から薬物治療を取ったら相当程度の精神科医がその専門性を失ってしまうだろう。 少なくても一部の疾患には薬物療法が必須であり(⇛薬について)、これからもその意義を失うことはないと考える。 そん…

完全無欠コーヒー本を読んでみた〜小麦グルテンって悪いの?

各種ダイエット法に夢を抱く人は多いが、残念ながら奇跡は存在しない。 いわゆる〇〇ダイエットの類はどれも極端であり、医学的蓋然性がないことが多い。身も蓋もないが、そもそも太るかどうかは遺伝的に規定されている。とはいえ、色んなダイエット法や健康…

週刊現代の精神科薬批判は的外れ

風邪薬が風邪を治していないというと驚く人が多い。あれだけ内科に行くと風邪薬をもらっていたというのに!ということで。 解説すると、風邪の多くはウイルス性だが、風邪ウイルスに対する直接的な薬は存在しない。よく貰う薬は日本では鎮痛剤や抗ヒスタミン…

精神疾患の治療について

精神疾患の治療…というとどうも人はカウンセリングという言葉が思い浮かぶようだが、一転実際に外来にかかると薬ばっかりという感想を抱く方も多いと感じる。 しかし実際のところ、精神疾患の治療は、生物学的治療(ほぼイコール薬物療法)+精神療法(対話によ…

自閉症の原因はワクチンや水銀じゃないよ

ワクチンに含まれる水銀が自閉症の原因だ、というのは結構広がってしまった虚報で、そもそもそれを提唱したイギリス人医師の論文が撤回された上に、本人が免許剥奪までされたというのに、未だに信じている人が多い。 心理的には、特に我が子が自閉症であるこ…

βブロッカーはあがりの振戦を予防する (カテゴリー: 治療)

以前、診察室にオーボエ奏者の女性が来た。聞けば来週オケの入団試験であり、音が震えてしまうわけにはいかないという。もともと緊張すると震えやすく、そのせいで演奏に失敗した経験もある。考えると不安でたまらないが、今回の試験で失敗は許されない、と…

震えと上がり症と城島さんと

人前で、大事な試合・演奏の前で、あがってしまうと震えてしまってどうしようもない、という人がいる。この震え(医学用語では振戦)にはどう対処すべきか? 多くの人は何事かする前に緊張する。人前で何かを発表する、スポーツで対戦相手と戦う、好きな人に告…

医学部受験:医学部ってどこの大学に入るかが関係あるの?

母校の高校にて、1年生に対し、「職業人の話を聞く」という企画に誘われたので今度講演することになった。医学部受験を考える高校生もいるということで、疑問に思われるであろうこの話題。要は同じ医学部でも大学によって違いがあるの??ということだが… 結…

ASDは増えているの?

ASD

ASDが増えているという声が聞こえる。 実際外来をやっていると以前に比べて遥かに多くの方がASDであると感じられるし、検査の希望も多い。 実際に増えているのか、ということを議論する前にデータを見ると、例えばアメリカでは2000年には150人に1人であった…

擬似医学入門

生活していると耳から入ってくる医学的な内容というのがある。そういった内容は何となく得心するところがあって、無意識に真実とインプットされやすい。 そんな内容に例えば以下。 1) ゲームをやり過ぎると脳の働きが鈍る。 2) 人間の脳は普段は10%程度しか…